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#3 おっぱいがいっぱい

花見を楽しむ母娘もいればアイドルを追っかける女の子もいる。タダ乗りしようとした家出娘もいれば一万円のチップをあげる怪しげな自称社長もいる。そして、あの日のお客さんは・・

2012.09.09

わっさわっさと、それはそれは大きなおっぱいが上下に大きく揺れながらぼくに迫ってきた。バックミラー越しのそのおっぱいに暫く目がくぎ付け状態になっていると、おっぱい・・いや、そのおっぱいの持ち主がドアをコンコンと叩いてきた。その音にハッと我に返ったぼくはあわててドアを開けた。

「あの黒い車を追ってちょうだい!急いで!」おっぱい、いや・・女性は後部座席から前かがみ状態に大きな胸をシートにおしつけながら前の黒い車を睨んでいる。また追跡かよ・・・

「うん、今タクシー乗った。浜松町から田町の方へ向かってる。いや、ひろしだけだよ。あ、運転手さん、気づかれないようにすこし離れて走ってください。あっ、左車線に移動して!」女性はケイタイを掛けながら、同時にぼくにもいろいろと指示を出してくる。「この先の交差点て右折できるのかな、うん、たぶんよう子のところに行くんだと思う。右折できないんならまだまっすぐ行くと思うんで、このまま左車線にいてください」もはやケイタイに喋っているのかぼくに喋っているのかわからない状態になってきたので、ぼくは前の車を見逃さないことだけに集中した。

国道15号線はこんな時間でもまだまだ車が多い。こんな時間にこんなにたくさんの人たちは、いったい何をしてるんだろう。そしてこのぼくはいったい何をしてるんだろう・・・そんなことを考えながら前の車を追っていると、標的は徐々にスピードを緩めはじめた。

「あ、あそこから行くんだ、ちがう、よう子のところじゃないみたい。たぶんあそこから回りこむと思うので、もう追わないでその角で停めてください」女性はケイタイを切ると、その大きな胸でひとつ深呼吸をした。

「○○○円になります」
「おつりはいらないです」
千円札を2枚出して車を降りた女性は、またあの巨大なおっぱいを上下に揺らしながら横断歩道を駆けていった。

二度目の追跡劇だった。たぶん、あの胸の大きな女性は彼氏の浮気現場を追跡していたのだろう。あんな見事な胸の彼女がいながら浮気するとは、なんてけしからん男だ。


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