わんとワンの物語 15

５匹のワンたちは総てわんから旅立った。一番強い感情を探しにたくさんの宇宙に旅立った。果たしてあの子らは本当の感情を見つけることができるんだろうか。でも、とふとわんは考える。果たしてわんには強い感情はあるのだろうか。わんは強い心になったのだろうか。強い遺伝子はあの子らに遺せたのだろうか。

いや、考えてもしようがない。本当に強い感情、強い遺伝子はそう簡単にできるもんじゃない。その為にわんたちは先祖代々、遥か遠い古代からたくさんの宇宙を旅してるんだ。わんはその意志を貫くだけだ。この宇宙がいつか美しくなるためにね。

さて、あの子らもいなくなってワン母とふたりっきりになったことだし、また次の遺伝子でも創るとしようか。でもせっかくワン母とふたりっきりになれたのに、あの白いタクシーの運転手は相変わらずしつこくここにやってくる。まったく・・空気の読めぬホントにろくでもない人間だ。

「おまえの書いてる物語はどうなった」とわんが訊ねると、あいつは指を３本立てた。どうやらあのろくでもない物語はあと３話で完結するらしい。あいつもやっとワン語が理解できるようになったようだ。ワン語よりも空気を読んでほしね、まったく・・・やっぱりろくでもない人間だ。