わんとワンの物語 2
わんはワン父である。名前は・・あるはずだが、時々やってくるあの白いタクシーの運転手がわんのことを「ワン父」と呼んでいるので、わんも自分のことをワン父と言ってるだけだ。手前のワンはわんのツレの「ワン母」である。どうだ、なかなかの美人さんだろ。
この宇宙のニンゲンはワン語がわからないらしいが、どうやらここのニンゲンたちもワンをマネて自分のことを「わん」と言っている。ろくでもない連中だ。しかしこの宇宙のニンゲンは他の宇宙のニンゲンと比べたら少しはマシなのかも知れない。
実はわんは昔々ニンゲンになりたかった。でも色々な宇宙を旅しているうちにニンゲンにシツボウして、ニンゲンになる夢を諦めたのだ。なんでかって?ニンゲンはいつまでたっても争い事ばかりしているからだ。ニンゲン同士で殺しあいばかりしているからだ。
わんがこの5匹のワンをこの宇宙に創ったのは、「強い遺伝子」を全宇宙に遺すためだ。強い遺伝子を創ることがわんたち先祖代々の使命だったのだ。強い遺伝子がなぜ必要なのかはそのうちゆっくりとワンたちに教えていこうと思っている。なに、あわてることはない。なにしろこの5匹のワンは生まれたばかりなのだから。
ここだけの話だが、実はわんにはこの5匹のワン以外に13匹の子ワンがいるんだ・・もちろんこのことはワン母には内緒にしといてくれ。
時々やってくるあの白いタクシーの運転手が、わんはどうも好きになれない。というか車を運転するニンゲンはみんな嫌いだ。ニンゲンが発明するモノは結局さいごには人殺しの道具になってしまう。道を走るモノは戦車になり、空を飛ぶモノは戦闘機になり、宇宙に行くモノは偵察機になり、ロケットはミサイルになり、コンピューターはサイバーテロになり、ニンゲンはヒトゴロシになった。だから人殺しの道具を操作するニンゲンはみんな嫌いだ。
しかしこの宇宙は他の宇宙より少しはましなのかも知れない。この宇宙のニンゲンは他の宇宙のニンゲンより少しはマシなのかも知れない。この宇宙に来てここがだんだん好きになってきた。そして、またニンゲンになる夢を思いだしてきた。
今日もあの白いタクシーの運転手がわんの写真を撮っていった。なんかふぇーすぶっくとかいうのにわんの写真を載せるらしい。わんもふぇーすぶっくでもやろうかな。もちろんワン母には内緒でね。