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赤尾木の無線塔 @31

3基あるはずだ。

赤尾木の国道沿いから右手の原野を見ると、ひときわ高いコンクリート造りの塔が見えた。たぶんあれだろう。右折できる脇道をさがして、そのまま塔を目指して進んでいった。農道はわりと広くて走りやすい道だったので1基目は容易く行くことができた。

30mほどの高さだろうか。農道のすぐ脇、所々にサトウキビ畑の広がる原野にポツリと立っている無線塔。昭和13年、産業振興用としてこの赤尾木の地に10基の無線塔が建てられたが、後に太平洋戦争時には軍事施設として使用された。今は3基しか残っておらず、そのうちの1基がこの塔だ。コンクリート壁には米軍機から受けた銃弾跡も残っている。

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塔の入口から中に入ってみた。見上げると、さっきまであった雨雲がサッと無くなり、塔の天辺からは雲の隙間からでてきた青空が見える。真っ暗だった塔の中に陽が入り一瞬で中は明るくなった。眩しい光だ。

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残りの2基は少し離れた所にあるらしい。地図を頼りに探してみたがなかなか見つからない。車一台がどうにか通れるような小さい農道を走りひたすら塔を探す。両端には背の高い蘇鉄たちが道までせりだしてきて、蘇鉄の葉を車でどかしながら進んでいく。しかしいつまでたっても見つからない。

どうやら全く逆方向を走っていたらしい。

もう一度地図をじっくり見て、そして地図の道を忠実に走ることにした。
 

サトウキビ畑の向こうに緑の塔・・のような物が見えてきた。その手前にコンクリートの塔があった。やっと見つけた2基目と3基目の無線塔。しかし、全身ツタに覆われて緑色になったあの塔の前には、荒れたサトウキビ畑とたくさんの草木が立ち塞がって近くまで行くことができないのだ。ほんの20mほど先、もう目の前だというのに。もう1つの塔はさらに奥にある。

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それにしても、これが無線塔か・・・ ツタに覆われた塔はコンクリート肌が全く見えず、戦跡というよりは絵本のメルヘンの世界。まるでジブリのアニメーションに出てくるような幻想的な塔だ(ジブリ観たことないけど)。ここからこうして眺めるだけでなんか違う宇宙にきたような、でも懐かしい既視感に目眩がする。

この2つの塔の並ぶその先には龍郷湾が見渡され、そのさらに先には東シナ海があった。


以下、龍郷町HPよりコピー ↓

無線塔は,昭和13年に開設された赤尾木送受信所(以下,送受信所)の存在を証明し,同時にアジア太平洋戦争の傷跡を今に伝えています。当初は10基ありましたが,今では3基のみが残っています。
 
奄美の孤島苦を救い,産業振興に寄与してほしいという島民の大きな期待を受けて,送受信所は開設されました。しかし,アジア太平洋戦争での米軍機の攻撃によって,昭和20年4月に通信施設が破壊されました。
 
この送受信所に対する攻撃は,赤尾木の住民にも被害を及ぼし,送受信所の職員の妻子2人が機銃掃射で死亡しました。また,度重なる空襲によって,龍郷村内の学校ではただ一カ所だけ赤徳国民学校が昭和20年5月の空襲で全焼し,集落の約3割も焼失しました。
 
送受信所は,終戦後昭和22年には復旧し,その後名瀬統制無線中継所赤尾木分室となり,昭和37年8月まで続きました。



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