★車中泊を始めた友人
僕の友人は仙台市で3LDKのアパートに彼女と住んでいたのだが何か事情があったのだろう、彼女は家を出て行き、彼は一人になった。
自分の部屋、彼女の部屋、物置、広いリビング。彼女がいなくなり、彼は強く孤独を感じた。嫌だ、このアパートは引っ越そう。
彼はスズキのエブリイという小型ワゴン車に乗り、転地を探すことにした。半年かけて部屋の荷物のほとんどを処分し、アパートを解約した。段ボール30箱の書籍はすべて古本屋に売却した。そして新しい住処を探す旅に出た。
エブリイの後部座席に布団を敷いて寝た。身長170cmの彼には少し狭い。しかし彼は我慢した。
最初に訪れたのは千葉県である。理由は単純で、知り合いが多いからだ。彼らとの交流が楽しみで真っ先に千葉に行ったのだ。
九十九里海岸の近くにある長生村に行き知人と面会した。一週間滞在した結果、長生村に長く住むのは難しいと彼は判断した。なぜかというと飲食店が少ないからだ。彼は食べ歩きが大好きなのである。
次に調べたのは安孫子、柏市である。安孫子駅のホームに巨大な鶏の唐揚げを提供している蕎麦屋があり、彼は感動した。味はごく普通である。しかしその大きさに感動したのである。この店の気前の良さに感服した。
柏駅周辺も調べた。たくさんの飲食店がある。しかし仙台との大きな違いは不明だった。仙台にも良い店はたくさんあるのだ。
彼は北柏駅の近くにある一泊500円の駐車場にエブリイを停めて連日柏駅周辺を散策したが柏に住みたいとは思わなかった。仙台より魅力的!と言えるSomethingが全く見当たらないのである。柏には文化がないのか?
ただし、柏駅から徒歩10分ほどの場所にある「銀の趣」という店は素晴らしかった。この店が仙台にあればなあ、と感じた。料理がHigh Levelで酒の種類が豊富、女将の接客もすばらしい。
でも、銀の趣だけが目当てなら引っ越す必要はないのだ。たまに上京すればよいだけだ。
彼は千葉県を諦め九州に向かった。なぜ九州かというと、非常に興味深い人物が住んでいるからである。
エブリイで東京、神奈川、静岡と西に進み、四日目に福岡に到着した。糸島という海岸に行き連日海を眺めていた彼はなぜか突然、佐賀県に向かった。彼は会社員時代、九州のあちこちを訪問したがなぜか佐賀県には縁がなかった。そのため佐賀に強い興味があったのである。
まずは唐津に行った。飲食店がたくさんあり彼好みの小都市であった。次に武雄市に向かった。武雄温泉はたいへん熱くて驚いた。佐賀の人はこんなに熱い風呂を好むのか。彼は武雄市民の気概を感じた。