★野球愛好者(11)
家に帰ってビールを飲みながらテレビでナイター中継を観戦するお父さん。昔は娯楽が少なかったのでお父さんは家での選択肢が少なかった。家内の娯楽=テレビ、だったのです。
お母さんは固定式電話を使って誰かと長話をすることによりストレス解消できた。しかし、お父さんは電話を使わずテレビを観た。テレビは無料なので安価な娯楽ですよね。
そしてお酒の友は野球中継だった。ところが今はスマホがある。そしてスマホには無限のアプリがある。もちろん野球中継も視聴できる。試合が退屈な場合はYouTubeがある。アマゾンPrimeがある。Netflixもあるし、ゲームもある。娯楽の幅がとんでもなく広がったわけです。
テレビ局は野球中継を熱心にやらなくなった。野球に興味のない人が増えてしまった。従って球団はテレビ局からもらえる中継手数料をあてにできなくなった。そうなると球場にお客さんを呼ぶしかない。球団は以前にも増して球場で楽しいことをたくさんやらざるを得なくなった。一種の劇場経営ですね、これは。
球場で観て楽しい選手。楽しい試合。ドキドキわくわくがある試合。いくら強くてもお客さんを球場に呼べない監督の評価は低くならざるを得ない。
連戦連勝しながら堤オーナーに冷たくされた西武の森監督は真面目に野球に取り組んでいたのに、球団からの評価が低かった。あるシーズンの終わりに森監督が堤オーナーに挨拶に行ったら「(監督を)続けたいならどうぞ」とオーナーが言った。森監督はたいへん落胆した。
長年西武で活躍した辻選手は語る。
【“やりたければどうぞ事件”は忘れられない。監督就任から3年連続で日本一を達成した翌年の89年、3位に終わった森監督に当時の堤義明オーナーが「来年はどうするの? やりたければどうぞやってください」と発言したことが大きな騒動になった。
「僕らも頭にきてね。『監督、絶対やめないでくださいよ』って言ったんです。『来年、日本一になって見返しましょうよ!』って。そして翌年、言葉通り日本一になった。よく選手が“監督を胴上げしたい”って口にするでしょ? そういう気持ちが選手の中から自主的に出るチームは強くなっていく。僕らも森監督からその思いにさせてもらいました」】(野球雑誌「Number」から引用)
卓越した野球理論を持つ江川氏が監督になれないのは、巨人入団時の騒動がかなり影響していると思いますね。彼が監督になるとそのチームのイメージが悪くなる。だからどこの球団も江川氏を選択肢から外していると想像しています。