★極道学園(581)

世界絶望真理教(略称、ゼツボー教)というのは近年世界中で信者を増やしている新興宗教である。教祖はイシノリと名乗る男性で年齢、国籍は不明だ。メディアには一切出ないので彼の顔を知る者は信者のみだ。

この宗教はこの世の希望の一切を否定するという特徴がある。そして一切の所有を否定する。入会希望者は現預金全額を教団に寄付し、家や車などもすべて処分して現金化し、教団に寄付する。そのうえで教祖の審査を受けなければならない。財産を一切持っていないことが入会条件になっているのだ。自転車、バイクでさえ所有禁止である。審査はたいへん厳しく入会を拒絶されることもあるそうだ。教団施設での共同生活に耐えられるかどうかが選別のポイントになるようだ。

信者は衣服を着ることも許されない。着衣も所有と見なされるのだ。ルチ先生はインドのジャイナ教から派生した宗教ではないかと述べている。陰部のみ、葉っぱなどで隠すファッションだ。 

無所有、肉や魚食禁止、虫を殺すことは許されない。卵や牛乳も禁止だ。信者は豆を栽培し、それを食べる。未婚者のセックスも禁止である。かなり禁欲的な宗教だ。信者が死亡した際は火葬ではなく土葬になる。身体に寄生する微生物を殺さないように、という配慮だ。

彼らは埼玉の山奥に広大な土地を借りて集団生活をしている。警察からの情報によると施設に住む信者数は10万人~20万人ではないか、と。

酒、タバコ、女、ギャンブルなど俺たち不良男が好むものの大半は禁止されている。畑では無農薬で野菜を栽培しているそうだ。もちろん釣りも禁止である。

インドのジャイナ教の場合、職業関係は以下のように記載されている。

【殺生を禁じられたジャイナ教徒の職業はカルナータカ州に例外的に知られているわずかな農民を除けばほとんどが商業関係の職業に従事しており、なかでも豪商と名高いジャイナ商人(ジェイン)が知られる。

ジャイナ教団体によると、インドにおける個人所得税の2割はジャイナ教信徒により納税されている。

その理由として、

『嘘を禁忌として、約束は絶対に守る』

『信徒は死後、生前の善行と悪行が帳簿の債権・債務のように集計され、来世の行方が決定づけられる』

『事業の成功も泡沫のものである』

と戒められ、また積極的な慈善行為、無所有主義など彼らが日頃から厳しい戒律を遵守していることから、清く正しい印象を客観づけられ、圧倒的な信用を集めているためと云われる。

そのため、信用第一である宝石・貴金属商に従事する者が多い。

ほかにも、インド商人ならではの高い語学力と計算能力からも、ビジネスマンとして重宝されている側面が在る】(Wikiから引用)

世界絶望真理教はWebサイトを持っておらず教祖が書いた本もないため、その実態は謎に包まれている。

絶望というと、どちらかと言えばネガティブな響きがある。しかしこの教団の場合、絶望とは夢を無くすなどの意味ではなく、欲を絶つ、という意味あいなのかなと勝手に解釈した。邪念を捨てモノを捨て、ひたすら善行に励みなさい、と。

世界絶望真理教は自殺を固く禁じている。自殺というのは生を諦め死に意義を見出だす行為とも言えるのであるが、死に意義を見出だすという考えは一種の希望だから、である。生を価値ありと思うのは希望、死を価値ありと思うのもまた希望だ、と。一切の希望を捨てよ、絶望して生きよ。これが教祖の教えである。

先日ポン社長、紅林警部と雑談していて、たまたまゼツボー教の話題になった。俺は「イシノリ教祖と会ってみたい」と言った。そしたら二人も「うんうん、いったいどういう人物なんだろう、たいへん気になる」と言っていた。

紅林警部が「九十九里新聞の編集長」を名乗り埼玉の教団に取材申し込みの電話をしたらあっさり拒否された。教祖はメディアに全く関心がないようである。

太田がニヤリと笑って「親分、信者になるしかないんじゃないすか?」と言うので「じゃあお前、信者になって探ってこい」と言ったら太田は「いやです」と即座に拒否した。(笑)

警察は日々信者数を増やしているゼツボー教をたいへん警戒している。オームの第二弾になるのではないか、と。しかし今のところゼツボー教には反社会的動きが全くないのである。紅林警部は「経過観察中」と言っていた。

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