★野球愛好者(7)
今はシーズンオフなので僕は暇ですね。2月、3月になると各チームが始動しますので、その様子を見るためけっこう忙しくなるんですけどね。12月、1月は書くことがないので野球コーナーは縮小されます。シーズンが始まると激務ですよ。全12球団、6試合すべての内容を把握する必要があります。監督、選手、コーチにインタビューする機会もたくさんある。
本当は大学野球とか高校野球、大リーグなどの記事も書きたいのですがうちの新聞はスポーツ欄が小さいため、あえて日本のプロ野球に限定して記事を書いています。
シーズンが始まると監督へのインタビューが増えます。故・野村監督はメディアに親切な人だった。チームが大敗したときなどは少々機嫌が悪いなと思ったこともありますがだいたいは飄々としてユーモアを交えながら新聞のネタになりそうな話をしてくれる。すごくサービス精神が豊富な人だった。
真逆なのは落合監督で、メディアを非常に嫌った。それにはちゃんと理由があるのです。落合監督が言っていないことが新聞に載る、という事案が多発した。このようなことがあると誰だってメディアに対して不信感を抱きますよね。以来、落合監督は新聞記者と話をしなくなった。もともとは、きさくでおおらかな人なんですけどね。
長嶋監督は面白かったですよ。あれこれ川の水が流れるようにしゃべってくれる。でも結局、何を言いたいのかわからない。長嶋監督のインタビューを文章にするにはけっこうテクニックが必要でした。(笑)
王貞治監督はたいへん紳士的な人で僕ら新聞記者にはとても優しかった。性格的には激しい部分もある人だと聞いていますがメディアに対しては感情を抑えている感じがしましたよ。
王さんはソフトバンクの監督になり、当初は成績が悪かった。福岡市民に卵をぶつけられたりした。世界の王に卵ですよ。僕は衝撃を受けましたね。その後、王監督はじっと堪えてチームを強化してついには日本一になった。とても劇的でした。
今までいろんな監督にインタビューをしましたが、やはり一番楽しかったのは野村さんかな。彼の野球人生は長嶋さん、王さんと違って決してエリートの道ではなかった。数々の辛酸を舐めた。堪えて堪えて、自分が関わるチームを強くしようと努力した。
野村さんは解説も面白かったですね。たいへん素晴らしい野球人だと思います。一方、少々子供みたいな部分もあり「(教え子の)古田は年賀状を寄越さない」などとわざわざ著書に書く人。実名を出していろんな選手、監督を批判したので彼を嫌う人々もたくさんいたと思いますが僕は野村さんが大好きでした。
さて、選手たちを非常に厳しい目で見ていた野村さんが滅多にないくらい絶賛した投手がいます。
【2019年4月、テレビ番組の「平成ベストナイン」を選ぶ企画で、野村氏は先発投手部門でダルビッシュを1位に選んだ。
平成の沢村賞受賞者を振り返ると、斎藤雅樹(巨人)にはじまり、野茂英雄(近鉄)、上原浩治(巨人)、松坂大輔(西武)、斉藤和巳(ソフトバンク)、岩隈久志(楽天)、田中将大(楽天)、菅野智之(巨人)といった錚々たるメンバーが並ぶ。その中でも、慧眼の野村氏が1位に選んだダルビッシュは、“史上最高の投手”有力候補といえるだろう。
野村氏は、その著書『最強のエースは誰か?』(彩図社)などでダルビッシュを、「150キロ台後半のストレートを持ちながら、スライダー、カーブ、ツーシーム、カットボール、スプリット、チェンジアップといった七色の変化球を操り、その全てが一級品。ストレート、変化球、どのボールでもストライクが取れる。加えて、野球頭脳も優秀で、試合中に状況に合わせて投球を変えることができる。本格派にして技巧派。過去にこのような投手は存在しなかった。投手としての能力は、ほぼ完ぺきに近い」と絶賛している】(野球雑誌の「Number」から引用)
ダルビッシュ投手は野村さんに高い評価を得てずいぶんと励みになったと述べています。僕は野村監督の笑顔を生涯忘れないと思います。