国策としての少子化対策ー「子ども」政策の根底の問題は、格差社会 Part5
前回「少子化対策」、「子ども真ん中社会」、が選挙受けするのか、私はを疑問を呈しました。その結果、予想通り、東京で盛んに衆院補選で演説していた候補は5位で落選。立憲民主党3議席獲得が報じられました。
裏金問題で自民党への国民の政治不信を裏付けた結果であり、思考停止状態で「子どもを大切に」を謳ったところで、ウケないのです。なぜなら、この問題の根底には、社会学者として言わせて貰えば、もっと深刻な問題、「格差社会」があるからです。
Part4でも、少し触れましたが、富裕層は子どもを少なく産んで、教育に惜しげなく投資し、大事に育てる。中学受験は、出生数が減り続けている割には、まだ人気です。だから小学受験まで熱が入る。大学までしっかり教育への投資を考えています。
一方、一般の家庭が私立中高一貫校に2人も入れて、その後地元ならともかく、東京の大学に2人も入れたら、授業料はもちろん、地方なら仕送りだけでも大変。その結果、地方の私立大学は倒産や統配合が進んでいます。
ただでさえ、18歳人口が少ないのに、全国区でない私大は生き残りが大変。
更に言えば、「子どもの貧困」問題は深刻で、学校給食しか食べられない子どもが増えています。離婚後のシングルマザーや、両親が揃っていても、非正規雇用が殆ど。ですから、少子化を食い止めたければ、まずこの格差を何とかしなければならないのですが、その方がずっと難しい問題なのです。
富裕層が教育熱が高く、所謂難関大学を突破したその次世代は、エリートとして、大企業や外資系のグローバルな企業、医師、司法試験、国家公務員1種のキャリアとして、安定した高所得を手にすることができる。
他方、公立小・中学校の教諭に成り手がいないのは、かつては地元の公立小中学校に行っていた優秀な生徒が受験で抜けてしまい、昔の偏差値50(つまり真ん中のレベル)が大きく低下し、学級崩壊やいじめなど対応しなければならない問題が山積。児童・生徒に怪我させられる教諭がいる程、レベルが低下しているのです。
少し前のニュースで「教育実習に行ったら、教師になるのは辞めた」という大学生のコメントが話題になりました。現在の公立の現場はそこまで荒れているのです。優秀な生徒がいても、自身が努力しないと、切磋琢磨するライバルもいないので、より熱心に勉強するのは難しくなる。
貧困層が働く場は、レジなど機械化できる仕事が多く、限定され、それも非正規で社会保険もない。更に物価高騰で所得は上がらず家計は苦しくなる。
こうして、格差は拡大再生産され、少子化や人口減少社会を憂う前に格差社会が解消どころかどんどん拡大している中、養えない子どもを産めという方が無理なのです。