(一般の方向け)あなたが思っている以上に主治医ガチャは存在する。(前編)
残念ながらそれは存在するのです。
〇〇ガチャ、という言葉はあまり好きではありませんが、
医療サービスを受けるにおいて最大のガチャは
かかる病院もさることながら、
かかった病院で担当となった医師
は最大のガチャ
と言えるでしょう。
一般的には
日本の医療水準は
平均すると諸外国に比べて高い
と言われていますが、
この"平均"というのはやっかいなもので、
名医も一般の医師もダメ医者も押し並べて平均した場合
という仮定の話であり、
目の前にいる医師または病院の提供するサービスが
"平均的である"かどうかを
事前に一般人が見定めることは極めて困難です。
かくゆう僕も、
地方で一人で暮らす母が
病院にかかるとなった時に
どの病院にかかるのが適切か?
という問いには
明確な答えは持ち合わせていません。
自分の展開している地域の外のことになると
全然信頼できる情報は入ってこないし、
ネット上にも上がってきませんので。
以前、ご紹介した方法を使えば
"はずれ"を引く確率はぐんと低くなると思いますが、
前回書いたのは主にクリニックを想定したものでしたので、
大きな病院にかかる際には
あまり使えないテクニックかもしれません💦
今日はそのことについて触れてみたいと思います。
仮想ケース:担当医Aと担当医Bと担当医C
あなたが検診で血糖が高いと指摘され
Z総合病院にかかったとします。
紹介状を持たない患者さんの場合は、
総合内科外来に誘導され、
日替わりで内科Drが担当しているようです。
あなたがかかった日の担当はA先生でした。
A先生はまだ若く頼りなそうで
あなたは少し心配になりました。
でもA先生は熱心にあなたの健康状態や
家族のこと、
血糖が高いこととはおよそ関係のないことを
細かく質問攻めにし、
あなたがクタクタになったところで、
「では食事と運動をがんばっていただき
1ヶ月後にもう一度来てください。
採血でチェックしてみましょう」
と言いました。
次の休みの日、
どうもA先生の様子に納得がいかなかった
あなたは別のY総合病院にかかることにしました。
かかった病院でやはり案内された
一般外来では
でっぷりとした体格の
いかにもベテランの中年医師が
深々と椅子に座っています。
名札には"総合内科専門医 B"と書かれています。
その威圧感に少々ビクビクしながら
あなたは検診結果を手渡します。
何も言わずじっと結果を見た
担当医Bは
「糖尿病ですね。まだ初期段階なので
薬を飲めば大丈夫ですよ。」
と急ににっこりとして
比較的最近発売された糖尿病治療薬を処方されました。
いかにも説得力のあるB医師を信用したあなたは
早速出された薬を飲み始めました。
数日のうちは全然体調にも問題なく、
自分が糖尿病であることも自覚することなく
普段通り過ごして数日が経ちました。
その日は
梅雨明けの猛暑日でした。
あなたは朝の日課にしている
庭の草木への水やりをしている時、
急に目の前の視界がゆがみ、へたり込んだまま
動けなくなりました。
慌てた家族が救急車を呼び、
糖尿病薬をもらったY総合病院に搬送され、
救急外来にたまたま当番となっていた
やや若い見た目なものの落ち着いた雰囲気のある
内科医Cが診察を担当しました。
採血データをみながら処方薬をチェックしながら、
あなたのこれまでのエピソードを聞いた
C先生はこう言いました。
「最近尿の出る回数が増えたりしませんでしたか?
この糖尿病薬は脱水症状を引き起こしやすいのです」
と言われました。
そんな話は初めて聞いたあなたは
B先生が何も説明してくれなかったと答えました。
するとC先生は、
「そもそもあなたは糖尿病の初期段階なので
薬を飲む前に食事や運動をしっかりすれば、
血糖の異常は正常化することも多いんです。
ガイドラインにもそのことは明記されています。
そのような説明はありませんでしたか?」
と言いました。
あなたは最初にかかったA先生の話を
思い出し、信じなかったことを後悔したのでした。。。
解説
この仮想ケースに似た状況は
日常に溢れかえっています。
実際にはC先生は、
いろいろな出来事を見た後で意見を述べているので、
少しズルいのですが、
おそらく最も内科医として標準的な力量を持っており
ある程度経験も積んだ医師だと推察されます。
A先生はまだ内科を専攻し始めたばかりの後期研修医です。
初期研修の2年間は
一般内科的な知識や経験を積む場面に
あまり遭遇することがなかったので、
教科書やガイドラインには
きちんと目を通しているものの
頼りないものとなったのでしょう。
最もやっかいなのがB先生。
一般的には"脂の乗った"年齢であり
一見非常に頼りがいのある先生に見えますが、
新薬好きでろくに患者に説明もせず薬を処方することから
後でクレームになることもしばしばあり、
院内では鼻つまみものとなっている医師だったのです。
解説はここまでとして、
おそらくここまで読んでくださった皆さんは
口を揃えて
「C先生にかかりたい」
というでしょう。
しかしその希望が叶うかどうかは
くじ引きと同じなのです。
予約のいらない外来のワナ
一般的に総合病院の専門科は細かく細分化されており、
そこでは原則予約患者さんしか受け付けてくれません。
紹介状なども特になく予約もなく
飛び込みできた"一見さん"は通常
"一般外来"や"総合外来"というところに
案内されて受診することになります。
この一般外来に専任の医師は
ほぼいません。
多くは専門科から当番で担当している医師が
日替わりで対応したり、
内科であれば、その専門分野に進んだばかりの
後期研修医が担当となることも多いのです。
でも昨今の働き方改革の影響もあり
それだけでは人員を十分に確保できない病院も
増えています。
そんなとき、
私のようなフリーランス医師や
他病院からの応援医師を
定期非常勤として雇うこともしばしばあります。
要は
あなたが信頼する総合病院にかかったとしても、
その病院に属して十分にキャリアを積んでいる
医師にかかることができる確率は
紹介状なしでは非常に低く
あみだくじと同じだ
ということです。
じゃあ紹介状を書いて貰えばいいだろう
ということになるのですが、
残念ながら話は
そう単純ではありません。
それはなぜか?
長くなってきてしまったので
続きは後編で。
それでは、また。