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重症筋無力症の概要
市中病院でも比較的出会うことのある疾患です。
第3回内科専門医試験では問われなかったので、来年は問われるかもしれません。本日は概要についてのみ説明し、治療とトピック(神経内科専門医試験向け)については後日述べることにします。
自己免疫的機序により、神経筋接合部のAChRに対する抗体が産生されることにより、筋無力症状が出現する疾患です。抗MuSK抗体がMuSKに結合するとAChRを減らしたり、ブロックする作用があります。抗LRP4抗体も発見されていますが、現在のところはcontroversyです。
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分類はO/gELTMuN分類を用います。胸腺摘除術の適応があるかが試験で問われます。前縦隔腫瘤がある際には悪性腫瘍の可能性があるので、基本的には摘出するのが前提ですが、試験的には胸腺摘除術の適応は「TAMGと胸腺腫を伴わない場合は全身型で50歳以下に考慮」となります。
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抗AChR抗体と抗MuSK抗体の違いも試験で問われるポイントです。抗MuSK抗体の方がChE阻害薬の効果に乏しく、クリーゼの発症率が高いです。また、抗MuSK抗体は補体介在性運動終板破壊がないので、補体C5阻害薬(別稿)の適応がありません。
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臨床像では何となく夕方だるい、だけでなく筋力低下を伴う病歴を聞き取ることが大事です。眼から障害されることが多いですが、連動せず独立して障害されます。
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増悪因子も大切です。呼吸器感染症は言うまでもありませんが、処方が禁忌の薬剤もたくさんありますので、プライマリケアの先生方にも処方には注意が必要です。
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身体所見では10回瞬目後の眼瞼下垂を見ることが多いです。Enhanced ptosisは両側眼瞼下垂があるときに行いますが、脳神経内科医向けです。
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検査は抗体検査は必須です。テンシロンテストも行います。方法はもちろんのこと、アトロピンとモニター管理が必要になり、テストでも問われるポイントです。
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反復誘発筋電図はこのきれいな形を出すのは大変ですが、答え合わせでやっています。3Hzでwaning減少を来す鑑別疾患が重要で、Lambert-Eaton筋無力症候群、ALS、筋ジストロフィーなどでも出現します。
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今回の内容は以上になります。
次回は治療について述べたいと思います。