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臨床医が紹介する日本のスタートアップ技術(第2回)AI受診相談とAI問診で効率化と質の高い医療を実現するUbie

患者および医療者目線の相互連携をAIで実現

コロナ禍で加速したものの中にオンライン健康相談があります。発熱がある、感冒症状があるというだけで医療機関への受診が難しくなってしまったコロナ禍では、ちょっとした症状の自覚でこれまですぐに受診していた状況でも、受診に伴う感染リスクなどを考慮して受診控えが起こっています。

この1年間で、様々な企業がオンライン健康相談に乗り出し、オンライン診療も規制が緩和され、オンライン健康相談・医療相談・オンライン診療などが一気に普及してきた印象です。オンライン健康相談は気軽に安価で相談できるという利点はありますが、一部報道にあったように医師などが健康相談への回答に不誠実であったということもありました。その背景には、医師の健康相談業務に対する報酬がとても安価、あるいは無償であったことが理由の1つとして挙げられます。

また近年ではAIによる診断学の発展が目覚ましく、内視鏡診断や画像診断でも研究が進んでおり、内視鏡診断では、国立がん研究センターで大腸がんの見逃し回避を目的としたリアルタイム内視鏡診断システムが開発され、実際に運用されています。同様に様々な企業がAIを用いた診断への研究開発に努めてきています。

このように様々な変化が起きている中、問診にも新たな動きが生まれています。それが、Ubie(Ubie株式会社)という企業が提供する、AIを用いた医療機関向けサービス「AI問診ユビー」と、生活者向けサービス「AI受診相談ユビー」です。

「AI問診ユビー」は、AIが患者の主訴や訴えに応じ質問を出し分け、詳細な問診を行うことで、問診業務の効率化を実現。さらに参考病名や、参考病名のガイドライン情報が表示され、診療業務全体のサポートを行います。さらに紹介状の作成機能などがあり、医療機関連携の効率化・適正化のサポートも可能です。

「AI受診相談ユビー」は、患者自身が自分の症状や経過から関連する病気やその病気についての情報、近隣で受診できる医療機関の情報を調べることができます。

実際にAI受診相談ユビーを使ってみました。年齢性別を入力して、一番メインとなる症状を入力すると、あとは選択式でクリックしていけば進んでいきます。実際に使用してみて感じたのは、回答に合わせ様々な角度から質問を深掘っていることです。入力を終えると、参考病名や対処法、受診すべき診療科、近所の病院・クリニックが表示されます。

また医療機関向けサービスの「AI問診ユビー」では、患者が回答データを受診前に、医療機関に送ることができる「来院前問診」という追加機能もあります。医師が救急外来などで多数の患者さんをトリアージしながら優先順位をつけつつ、それぞれの患者さんに向き合う中でAI問診ユビーがうまくワークすると、医療機関での業務効率につながる可能性があります。さらに電子カルテのシステムに関係なく導入できるという点も、比較的導入しやすいメリットです。

最後に、Ubie社はグローバルな展開を進めたり、PHR(Personal Health Record)機能への拡張など新しいことに挑戦し続けている企業だと思います。何より、お話を伺ったUbie社スタッフの方が、充実して楽しそうに働いていることが感じ取れたのは印象的です。
最近ではワクチン接種Web問診システムを自治体向けに提供しており、医療従事者から今後一般の方へのワクチン接種において有用となりそうです。今後のさらなる新しい事業に注目しています。

(了)


【参考文献】


株式会社シーエムプラス「LSMIP」から許諾を得て転載する。
AI受診相談とAI問診で効率化と質の高い医療を実現するUbie | LSMIP


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