指導医の訪問診療に、入院担当研修医が同行する取り組み

まずはこの10年の研修の中で発表した活動実績です。

私が総合内科と在宅診療科を兼任していることから、
入院患者さんが在宅に移行した際、もしくは在宅患者が入院しまた自宅退院した際に、
入院中に担当をして下さった初期/後期研修医もしくはNPさんを、退院後の訪問診療に同行して頂きました。
そのアンケート調査を、2023年の在宅学会で発表しましたが、
その後雑誌「病院経営羅針盤」より執筆依頼を頂き、2024年3月号に掲載させて頂きました。
https://www.e-sanro.net/magazine_iryo/rashinban/k20240315.html


初期研修での地域研修と後期研修での在宅診療研修を通して、「病院での医療が中心となって患者家族の生活や人生がある」のではなく、「患者・家族の生活や人生の一部に医療がある」ことを学ぶことができた経験が、今でも医師人生の糧になっています。
急性期病院で病院総合医と在宅医を兼任している理由には、病院・在宅の双方の視点から患者をシームレスに診ることができ、社会背景を持った患者が、病院という特殊な環境の中で治療をしていることを忘れないでいるためです。

現在も、在宅診療科で訪問診療をしている患者が入院をして担当になったり、入院している患者が新規に在宅導入となった際には、退院後に私の訪問診療に同行する機会を作っております。

厚生労働省による臨床研修での地域研修の資料では、「地域医療については、適切な指導体制の下で、患者が営む日常生活や居住する地域の特性に即した医療(在宅医療を含む)について理解し、実践するという考え方に基づいて、(中略)医療・介護・保健・福祉に係わる種々の施設や組織との連携を含む、地域包括ケアの実際について学ぶ機会を十分に含めること」との記載があります。
また、研修医への訪問診療研修で得られる教育効果に関する研究では、「患者・家族の本心に配慮したコミュニケーションの認識」や「患者・家族中心の診療態度・価値観の形成」「地域の医療資源と訪問診療の役割の認識」等の8つのカテゴリーが抽出されています。
米国でも、内科レジデントが退院後自宅訪問を行うことで「心理社会的側面を考慮したケア」「薬剤調整」をより意識した退院計画が必要であることを学べたと報告をしております。


医師は卒後年数が経ち幅広い研修から遠ざかるにつれて、関連領域以外の医療に関わる機会が少なくなる傾向にあります。特に在宅医療にかかわる医師は多くありません。
しかし目の前で受け持つ患者は、それ以前に生活者であり、皆それぞれ住んでいる家や施設があり、それを支えている家族や在宅・施設スタッフがいて生活をしています。退院や帰宅される時にも、患者の生活や人生は続いており、医療が関わっているのはその一部に過ぎないことを知ってほしいと思っています。

もちろん在宅医療や総合診療を行える内科医が増えていって欲しいとも思いますが、そうでなくてもそれぞれの医師が地域医療や在宅医療の視点をもちながら、入院外来診療を提供することができればと考えています。
また全ての医師はもとより、病棟看護師や診療看護師、薬剤師、リハビリスタッフなど多職種もこの視点は持っていて欲しいと考えています。私の理想は病院―在宅をいずれも診られるシームレスな統合されたチームスタッフの構築であったりします。

入院でも外来でも自分の担当患者になることは「巡り合わせ」だと思います。その方の病気だけではなく、どんな生活と人生を辿ってきて、目の前におられるのかを知ることで、より味わい深い診療になると思っております。
1人1人の患者・家族を大切にして頂き、医師として、一人間として、たくさんのことを教わって、学んでほしいと思っております。
その導き役として、異なる医療現場の垣根を超えた出会いの場を作れることを、教育者として嬉しく思い、これからも医療と教育の現場に勤しんでいきたいと思っております。
 
参考文献
・第3回医道審議会医師分科会 医師臨床研修部会資料
・在宅訪問診療研修の効果に対する研修医の主観的評価に関する質的分析 富塚太郎ら
・Posthospital home visit as teaching tool for internal medicine residents. Gerontol Geriatr Educ. 2020 Oct-Dec;41(4):514-521.


日本在宅医療連合学会の専門医試験で提出したポートフォリオです

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