Dr.Shiero

関東の急性期総合病院で、病院ー在宅連携を中心に、地域医療の発展と、医学教育に勤しんでおります。総合内科専門医指導医・家庭医療専門医指導医・在宅医療専門医指導医。日々の診療の学びをまとめております。

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関東の急性期総合病院で、病院ー在宅連携を中心に、地域医療の発展と、医学教育に勤しんでおります。総合内科専門医指導医・家庭医療専門医指導医・在宅医療専門医指導医。日々の診療の学びをまとめております。

最近の記事

心不全 「原因病態編」

急性心不全を認識したら、血行動態改善に向けた治療が重要なのは当然ですが、同じくらい(かそれ以上に)「心不全の原因」を特定して治療することが大事です。 「急性心不全」は病態であり、疾患名ではありません 心不全を詰めていくには、心不全を要素に分解して考えます。 1.基礎心疾患 2.増悪因子 3.血行動態 それぞれの要素を診断することで、心不全という病態が、特定の診断名になり、それぞれの要素に対して治療が考えられます。 1や2考える際には、循環を下図のように

    • 心不全 定義・診断編

      心不全は、「心臓が、全身の末梢組織の需要に見合う、十分な血液を送り出せない状態」「心臓の構造または機能の異常により、全身の末梢組織の需要に見合う、十分な酸素を送り出せない状態」と定義されていますが、 それって実臨床ではどういうこと?と、難しく、非実用的でした。 2021年にESCの心不全のガイドラインがPublishされました。 ESCはかなりきれいな図が多くて、英語が読めなくても図だけで大体やることがわかるのでおすすめです。 https://academic.oup.co

      • Hospital at Home(HaH)

        これからの在宅診療・地域医療の新しい形態になると考えられている Hospital at Homeについて解説します。 まずは「在宅医療」の形態について  “Home-Based Medical Care”が、一般の日本人が用いる日本語としての「(広義の)在宅医療」に一番近い概念だと思います。 この“Home-Based Medical Care”の中に、 “Home-Based Primary Care (在宅プライマリ・ケア)”、 “Home-Based Pall

        • ACSCs Ambulatory Care Sensitive Conditions

          Ambulatory Care Sensitive Conditions(ACSC) とは、「プライマリ・ケアの適切な介入により重症化による入院を予防できる可能性のある疾患(群)」のことです ・総論 ACSCによる入院は、高所得国における入院の 5~10% を占めており、多くの国でプライマリケアの質の指標として使用されており、英国やオーストラリアのビクトリア州など一部の国で全国的に使用されています。 入院の原因となるすべての要因が、プライマリケア提供者の直接的な管理下に

          入院関連障害/入院関連合併症

          入院患者をみる医療者は、知っている必要がある概念だと思います。  Hazards of hospitalization of the elderly Ann Intern Med. 1993 Feb 1;118(3):219-23. PMID: 8417639. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8417639/ Hospitalization-associated disability: "She was probably able to

          入院関連障害/入院関連合併症

          Top 20 Research Studies of 2023 for Primary Care Physicians

          AAFPアメリカ家庭医学会が、2023年のReseach Top20を発表しました。POEMs(patient-oriented evidence that matters)と認定された2023年の研究トップ20を要約しております。 〜〜〜〜〜 1. 降圧薬の内服タイミングは、患者の覚えている可能性が最も高い時間に服用する Hygia Chronotherapy Trial とは対照的に、TIME の大規模研究では、患者がいつ血圧の薬を服用したかは重要ではないことがわかり

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          プライマリ・ケアの定義に迫る

          2024年の日本プライマリ・ケア連合学会での 「日本でのプライマリ・ケアの定義に迫る」のまとめです https://www.primarycare-japan.com/primarycare.htm プライマリ・ケア学会サイト 5 つのキーワード 「Accessibility(近接性)」 「Comprehensiveness(包括性)」 「Coordination(協調性)」 「Continuity(継続性)」 「Accountability(責任性)」 日本でも「プライマ

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          ジェネラリストとは

          2023年の日本プライマリ・ケア連合学会で、発表されていたものです。 The ongoing antagonism between the plough, the town and the gown remains a dominant factor that shapes the path to generalism. https://www.racgp.org.au/afp/2015/march/a-historical-perspective-of-the-barri

          ジェネラリストとは

          ペラグラ

          ニコチン酸(前駆物質:トリプトファン)の欠乏 リスクファクター:アルコール乱用者、免疫抑制薬や抗結核薬など 3つのD:皮膚炎 Dermatitis、消化器症状Diarrhea、神経精神症状 Dementia 治療:ニコチン酸アミドの補充 検査に限らず、リスク・症状から疑ったら治療を! 適切な治療を受ければ、回復の予後は良好 〜〜〜〜〜 ペラグラは、ニコチン酸やその前駆物質であるトリプトファンの低下を主体とした栄養素欠乏症の、まれな病気です。 ナイアシンは、ニコチン酸とニコ

          Wernicke脳症

          ・ビタミンB1欠乏による精神症状、眼症状、歩行失調 ・アルコール依存症の他にも栄養欠乏の患者にも起こりうる ・古典的三徴が揃うのは、約10%ほど ・アルコール性と非アルコール性では出やすい症状が異なる ・Wernicke doseには明確なコンセンサスはない ・低マグネシウム血症の場合は、補酵素のMgを投与 〜〜〜〜〜 <リスク> 1881年にCarl Wernickeによって初めて報告されました。 米国ではアルコール依存症が最も一般的な病因ですが、妊娠悪阻、腸閉塞、悪性腫

          Wernicke脳症

          NBM(Narrative Based Medicine)

          前回の投稿と合わせてご覧頂くとよいと思います 慌ただしい病棟や外来では、 症状に対して、病態生理を探求して、疾患diseaseを見つけて、医学的管理に注力します(本来はそういうものですが) 一方で、病気に罹患した患者さんの想い・病い体験・文脈を聞くことは少ないかもしれません (もしくは医療者は、患者が発言していても、注目していなかったり、カルテのSにも書かないかもしれません) ただ病気の診断や治療に、患者さんのillnessを聞くことや、narrative medicin

          NBM(Narrative Based Medicine)

          患者さんのDisease/illness/Health

          今、自分の大切な人が、急遽病院に行くことになったら、入院することになったら どんな気持ちになるでしょう 「その時、歴史が動いた!」のようなとてつもないイベントを感じることになるでしょう 医療者としては、普段から業務として患者をみているため、当たり前のようになってきてしまい、麻痺してしまうのです ただその患者さん自身や、それを取り囲む家族・コミュニティでは ガラッと大きな物語が始まるはずです 患者さんによっては、これまで通りの暮らしに戻れることもあれば、新たな薬が始まった

          患者さんのDisease/illness/Health

          低血糖

          低血糖とは、血糖値が70mg/dL以下で、自律神経症状と中枢神経症状 neuroglycopenic symptomが合併した状態を指します。 代表的な特徴として、「Whippleの3徴」があり 意識が悪くて、血糖が低く、糖を入れると改善する (大元はインスリノーマの特徴として言われています) 自律神経症状と中枢神経症状とは具体的には以下のように書かれています。 症状は、人によって様々で、血糖値によっても様々です。治療するかどうかを決める際には、症状と血糖値に注意すること

          指導医の訪問診療に、入院担当研修医が同行する取り組み

          まずはこの10年の研修の中で発表した活動実績です。 私が総合内科と在宅診療科を兼任していることから、 入院患者さんが在宅に移行した際、もしくは在宅患者が入院しまた自宅退院した際に、 入院中に担当をして下さった初期/後期研修医もしくはNPさんを、退院後の訪問診療に同行して頂きました。 そのアンケート調査を、2023年の在宅学会で発表しましたが、 その後雑誌「病院経営羅針盤」より執筆依頼を頂き、2024年3月号に掲載させて頂きました。 https://www.e-sanro.n

          指導医の訪問診療に、入院担当研修医が同行する取り組み

          note設立にあたり

          自分のこれまでのキャリアについて認めようと思います。 高校時代に医師になると決めた時に、単一臓器だけではなく、全身をみれる医師になりたいと思っておりました。 全身をみれるという点で、救急医を考えた時期がありましたが、最後まで見届けることができない葛藤を感じていた矢先、 偶然テレビで、総合内科医の特集をしており、プライマリケア・ゲートキーパーとして、ゆりかごから墓場まで、色んな症状・臓器を、全人的に診れる姿を拝見して、総合内科のある病院での研修を目指すことにしました。 新専

          note設立にあたり