Hospital at Home(HaH)

これからの在宅診療・地域医療の新しい形態になると考えられている
Hospital at Homeについて解説します。

まずは「在宅医療」の形態について 
“Home-Based Medical Care”が、一般の日本人が用いる日本語としての「(広義の)在宅医療」に一番近い概念だと思います。

この“Home-Based Medical Care”の中に、
“Home-Based Primary Care (在宅プライマリ・ケア)”、
“Home-Based Palliative Care (在宅緩和ケア)”
“その他(House Calls、Transitional Home Care、Hospital at Home など)”が含まれます。
“House Calls”は、いわゆる「往診」 に当たります。
“Transitional Home Care”は、「退院後訪問指導」のことです

在宅医療とは何か ⑴: すべての道は“在宅”に通ず 伊藤大樹
診療と新薬 2018; 55: 3-13
縦軸が医療ニーズが高い 横軸が急性期・短期間の介入
The Time is Now. J Gen Intern Med. 2022 Jul;37(9):2302-2305. PMID: 35710677

・外来通院困難(外来からの延長)
・緩和ケア
・小児在宅ケアや神経難病などデバイスユーザー
・病院に近いような急性期医療を在宅で行うHospital at Home(HaH)
この4つ目が、COVID-19を皮切りに、全国で普及してきたと思います

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2023年の1月にNY timesにHaHが紹介されました
https://www.nytimes.com/2023/01/26/magazine/hospital-at-home.html

「Hospital at Home(HaH)」の定義について
・普遍的な定義はない
・これまで病院に入院して行ってきた急性期ケアを在宅で提供すること   
 https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2621275/
・WHAHC 2023  世界在宅入院会議で合意された定義
 World Hospital at home congress WHAHC 2023
 https://whahc-community.kenes.com/mod/page/view.php?id=1042

 「在宅入院 HaH とは、通常病院で提供されるスタッフ、設備、技術、薬物療法、技能を、自宅や老人ホームで提供する急性期臨床サービスである。
その目的は、病院レベルのケアを自宅で提供するよう病院の文化を変えることによって、病院を必要とする病人の生活を改善することである」
"Hospital at Home/ Hospital in the Home (HaH/ HITH) is an acute clinical service that takes staff, equipment, technologies, medication and skills usually provided in hospitals and delivers that hospital care to selected people in their homes or in nursing homes. It substitutes for acute inpatient hospital care.
It’s goal is to improve the lives of sick people who need hospitals, by changing the culture of hospitals to deliver hospital-level care at home."

HaH is
制度・規制の対象
病院主導 and/or 専門医によるケア(プライマリケアとは別)
エピソード型
24時間365日対応
エピソード中は、すべての医療、看護、介護を提供する

 HaH is not
外来ケアではない(自己管理による静脈内治療およびOPATは除く)
入院予防プログラムではない
地域ベースの慢性疾患管理プログラムではない
遠隔医療・オンライン診療ではない
日中の施設ベースの治療ではない
プライマリホームケアではない
コミュニティー・ナースや標準的な訪問看護ではない


「Hospital at Home(HaH)」の歴史について
1978年 英国 術後患者を対象に始まったと言われています
1995年 Johns Hopkinsにて肺炎・心不全・COPD・蜂窩織炎の退院患者で開始され
 Home hospital program a pilot study J am geriatric sec 47 697-702, 1999
 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10366169/
現在は、米国、英国、オーストラリア、カナダ、スペイン、イスラエル、韓国などで普及しております


日本での在宅入院(HaH)は、わかりやすく3つのsubtypeになると思います①病棟から在宅入院 Transfer to Home :post-acute
②救急室から在宅入院 Substitutive with ED:acute, acute exacerbation
③在宅から在宅入院 Substitutive w/o ED:acute, acute exacerbation
 かかりつけ医がやる 在宅プライマリケア、特別訪問看護指示
 非かかりつけ医がやる

Home hospital as a disposition for older adults from the emergency department: Benefits and opportunities. J Am Coll Emerg Physicians Open. 2021 Jul 21;2(4):e12517.
PMID: 34322684
在宅移行支援モデルというものが提唱されております

「Hospital at Home(HaH)」のエビデンスについて
アウトカム(死亡率、再入院率)、コスト、満足度いずれもよい結果が出ております

(最初のHome hospital のRCTを出したのは、あのCochraneだと言われております)

メタアナリシス
A meta-analysis of "hospital in the home". Med J Aust. 2012 Nov 5;197(9):512-9. PMID: 23121588.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/epdf/10.5694/mja12.10480
死亡率21%低下(NNT 50)、再入院率24%低下
61のRCTが組み入れ基準を満たした。HITHケアは死亡率(OR 0.81; 6992人の患者を対象とした42のRCT)、再入院率(OR 0.75; 5372人の患者を対象とした41のRCT)、費用(平均差 -1567.11; 1215人の患者を対象とした11のRCT)を減少させた。1人の死亡を予防するために在宅治療に必要な数は50人であった。患者満足度は22研究中21研究でHITHにおいて高く、介護者満足度は8研究中6研究で高かった;介護者の負担は11研究中8研究で低かったが、有意ではなかった。
結論:HITHは死亡率、再入院率、費用の減少、患者と介護者の満足度の増加と関連するが、介護者の負担には変化がない。

 NYでのERから入院 vs 在宅HaH
Association of a Bundled Hospital-at-Home and 30-Day Postacute Transitional Care Program With Clinical Outcomes and Patient Experiences. JAMA Intern Med. 2018 Aug 1;178(8):1033-1040. PMID: 29946693
https://jamanetwork.com/journals/jamainternalmedicine/fullarticle/2685092
患者507例(平均年齢 74.6歳、女性68.6%)のうち、退院後30日の全患者のデータが得られた。 HaH患者(n=295)は対照群(n=212)より高齢で、急性期前の機能障害を有する傾向が強かった。HaH患者は入院期間が短く (3.2 days vs 5.5 days)、再入院率 (8.6% vs 15.6%)や救急再受診率(5.8% vs 11.7% )が低く、ケアを高く評価する傾向も高かった(68.8% vs 45.3%)。認定在宅医療機関への紹介に差はみられなかった。
結論:急性期後30日間の移行期ケアエピソードにバンドルされたHaHケアは、入院と比較して、患者の転帰およびケアの評価の向上と関連していた

 アメリカでのRCT
Levine DM, Ouchi K, Blanchfield B, Saenz A, Burke K, Paz M, Diamond K, Pu CT, Schnipper JL. Hospital-Level Care at Home for Acutely Ill Adults: A Randomized Controlled Trial. Ann Intern Med. 2020 Jan 21;172(2):77-85. PMID: 31842232.
結果:平均コストは、在宅患者の方が対照患者よりも38%低かった。 通常ケアの患者と比較して、在宅患者は検査オーダー(3 vs 15件)、画像検査(14 vs 44%)、コンサルト(2 vs 31%)が少なかった。在宅患者は1日のうち座っている割合(12 vs 23%)や横になっている割合(18 vs 55%)が少なく、30日以内の再入院の頻度も少なかった(7 vs 23%)
結論:在宅入院は、通常の入院治療と比較して、身体活動を増加させながら、コスト、ヘルスケアの暴露、再入院を減少させた。



アメリカでHospital at Home(HaH)を行っている大内啓先生の掲載です
医学界新聞 急性期医療の新たな形態,Home Hospital
https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2024/3549_03

先日の在宅学会での講演では
これまで長期入院になると入院費用がかさむため、病院は経営的に成り立たなかった。
HaHをずっと推奨してきていたが、なかなか流行らなかった矢先に、コロナが流行し、このシステムでなんとかならないかとなった経緯がある。
海外に比べると、日本の在宅医療は発達しているため、システムや制度、エビデンスが整えば、HaHはやれるだろうとのことでした

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