心電図検定のススメ
要約
教材
おすすめは、マイスターチャンネル(YouTube)と3種の神器
3種の神器は(grade up演習→完全攻略マニュアル→grade up講座)の順番でやるのが良い
講義で概要をインプットしたらひたすら演習がおすすめ(チャラは1000問は解いた)
テスト準備
受験票に写真が必要(2.4cm×3.0cm)
ディバイダーはあった方が良い
時計も必須
空調は暑いと感じる人が多そう
マイスターチャンネルで復元を見ておくと良い
テスト本番
30問は基本問題、10問は罠ありor精読必要、10問は難問
35点取れば合格が見える(年によってはもう少し必要)
90分は長くない。2周は出来ないので、1周目で精読必要問題を見分ける必要あり
テストの受け方は受験と一緒 ペース配分、見直しなど当たり前のことをこなす
結論
心電図検定はすごく良かった。
受験に至った経緯、背景
チャラ兄はそこら辺の内科医である。内科医といっても専門は腎臓であり、循環器や心電図は決して得意とは言えない。大学の試験で単位を落としたのも循環器だったりする。
多くの医師には頷いてもらえると思うが、他の医療スタッフが思っている以上に我々は心電図が読めない。頻脈は、心房細動?PSVT?と頭の中はハテナで一杯である。胸が痛くて心電図を取っても、ST見逃してないかな??とドキドキしている。 そんな現状を変えたいと思って心電図の勉強をしようと思っても、非専門医は何から手をつけたら良いか分からないのだ。なんなら詐欺まがいの心電図本を掴まされて、慌ててAmazonで返品したこともある。
そんな時、Xでフォロワーさん達から、心電図検定を受ける!という話を聞いた。5年前に2級を受けようとしており、認知はしていた。ただ当時は心電図検定の勉強をしようにも、薄い公式問題集があるのみであった。公式問題集を開いて、2周したところで頭を抱え、受験を断念したという苦い思い出が私にはある。
こういったアカウントを運営していると感じることだが、機を逸するとチャンスはしばらく巡ってこない。もしかすると2度とこない。
そこで何級を受けるか、であるが迷わず一級を受けることにした。理由としては以下を挙げる。
・心電図検定が1年に1回であり、毎年心電図に時間を割くのは難しい
・世の心電図検定対策本が1級受験想定で作られている
受験を決めたのは10月であったので、凡そ2ヶ月で勝負することになった。
さてここでチャラ兄の背景を簡単にまとめよう。
・腎臓内科専門
・研修医の時に「心電図パーフェクトマニュアル」を読んだ(だけ)
・循環器内科の研修はサボった(ごめんなさい)
・普段は素敵な循環器の先生方にすぐお電話
・心電図をみたら機械の判読をすぐ見て安心する
なお腎臓内科は心疾患の合併が多く心電図の知識は必須である。
勉強開始
重い腰を上げ、Amazonに注文した最初の書籍は「心電図マイスターを目指す基礎力grade up講座」である。
この書籍は前半部分が講義、後半に50問(心電図検定と同様)×2の演習がついている。パラパラと前半の講義を読んでいると心室頻拍の項目がある。確かにwide QRSが心室頻拍なのか変更伝導を伴う上室頻拍なのかは内科専門医の試験でも問われるが雰囲気で解いていた。読んでみてなるほど!と思う部分が多い一方、知らない用語がある。negative concordant??なにそれ??という具合に。
これはこの本をこなす為のベースが必要であると分かったところYouTubeで「心電図マイスターチャンネル」というものを見つけた。そして、チャンネルの固定動画はなんと「SVTとVTの見分け方」ではないか!
このチャンネルはマイスターをお持ちの循環器専門の先生があの手この手で心電図について解説してくださっている。動画は大きく3パターンである。
講義動画 2. 心電図ドリル 3. その他(心電図検定復元など)
これが無料で見られるとはなんて便利な世の中だろうかと思う反面、流石にお金を落としたい!とも思うレベルのチャンネルである。
講義動画は、前半で概念を説明、後半で沢山の心電図を見ながらその概念をブラッシュアップする形式である。 唯一の問題?は充実し過ぎており、動画が沢山あるということである。そこで見るものを選ぶ必要があるため「基礎力grade up講座」の演習問題を半分解いてみることにした。結果は惨敗であった。3割分かるかな?程度の出来であった。 一方でどういった内容が問われ、重視されていそうかも見えてきた。SVTとVTの鑑別、冠動脈閉鎖部位の同定、PVCの起源、徐脈の鑑別など、見なくてはならない動画がおおよそ分かるようになった。
1ヶ月間はひたすら2倍速で通勤時間、お昼時に動画を見ていった。この時は具体的疾患名のつく動画、例えばたこつぼ心筋症、肺塞栓症などは未視聴だった。 目から鱗の集まりである。心電図を学びたいならば、心電図検定を受けずとも、このチャンネルを一度見る価値がある。
ここで気がついたことは心電図の勉強には、考え方を学ぶ部分とシンプルな知識の部分がある。ここまでで大まかな考え方(例えば心臓のどの部位を見ていて、そこから何が分かるか)は理解できたが、シンプルな知識問題が解けないことを悟る。 こうなればひたすら演習していくのみである。
結果として、勉強内容は2ヶ月で二分された。
1ヶ月目:マイスターチャンネルでひたすら講義動画を見る&ドリルを解く。
2ヶ月目:書籍などでひたすら演習問題を回す。分からない部分はマイスターチャンネルなどで勉強
演習用として用意したものが以下である(表参照) 1. 心電図マイスターチャンネル 2. 心電図マイスターを目指す基礎力grade up講座 3. マイスターが教える心電図完全攻略マニュアル 4. 心電図マイスターによる鑑別力grade up演習 5. 公式問題集 6. ER心電図 応用編 7. 心電図クエスト(Xでのhttps://x.com/tempest_no3からダウンロードした。ありがとうございます。)
以下問題集のオススメ、感想などを書いていく。
なお、2-4の書籍を私は「3種の神器」と読んでおり、この3冊は3−4周解き直した。公式問題集は2周、他は1周である。
1. マイスターチャンネル
マイスターチャンネルには、講義動画以外にドリルと題される動画あり。難易度は講義で出てきているものがほとんどで凄まじく捻られているという印象はない。非常に解説が丁寧かつ、分からない時に参照する講義動画のリンクがある。
心電図検定用模擬試験もあり、こちらも順当な内容である。チャラの正答率は42/50であった。
2. grade up講座
前半の講義部分は3種の神器の中では一番弱いがそれでも十分勉強になる。演習問題は50問×2となっていて、前半がhardで1-2級、後半がextremeで1級-マイスター相当となっている。ただextremeが解ける程度ではマイスターなど夢のまた夢である。恐らく、心電図検定難易度のインフレがあり、現状はこれが解けることは必須という印象。4周目のチャラの正答率は、49/50と48/50
3. 完全攻略マニュアル
前半の講義部分から丁寧かつ、演習問題も込みで解説してくれている。3種の神器で一冊選べと言われたらこの冊子。現在の心電図検定に一番対応できている。演習問題はこちらも50問×2でセット。当初は演習問題目当てで購入してチャレンジしたところ、43/50と36/50で慌てた。問題集の回答は若干軽めだが、講義部分がしっかりしているのでそこを読み込むと良い。結果的には先天性心疾患の問題などはこれを持っていたから解けた。直前期にアクテムラ先生と1時間で講義部分の解き直しをしたのは良い思い出。
4. grade up 演習
講義部分が大変丁寧である。1から順番に進めていく。心電図初心者はこの本から入っていくと良い。前から順番に実力をつけることができる。
5. 公式問題集
学会公式の問題集で以前からある。難易度がまず簡単で2級より少し簡単くらい。チャラは110/111(WPWの有名問題を誤答。公式からの声明でV2で判断をする難問が隠れている)。問題も似たような内容が順番に出てくるので答えが予想できる。解説も詳しくない。不要。
6. ER心電図 応用編
講義は別冊で存在するらしい。200問の演習が並んでおり、非常に濃厚。ただし、心電図検定には則していない。SVTの鑑別などは出てこない。チャラは後半の上級編を利用した。利用方法は反射で読むために問題をみて30秒で答えを確認するを繰り返した。答えに患者の転帰が書いてあったりするので、臨床に活かすことを考えると読んでおきたい。心電図検定合格という点を考えると優先順位は低い。「心房粗動が読めない人は心電図をひっくり返す」という一文は目から鱗だった。確かに粗動波が見えないのは下に凸だからである。
7. 心電図クエスト
Xで流れてきた問題集。他にもPVCの起源なども作っておられる。心電図検定に精通している方々が作っておられるようで、心電図検定に非常に則していると思われる。問題を海外などの心電図ホームページなどから取ってきており、そのサイトを読むだけでも勉強になる。問題の解説はないので、最終調整用だろう。後半に鬼難易度の問題たちも控えている。チャラは初期にやって10問で一旦閉じた。直前は51/70。
※追記 作成者様から前半50問の難易度がB、後半20問はSであるとご指摘いただきました。その通りかと思います。なお、今後解説付きの問題集を作成されるとのことです。解説があれば間違いなく3種の神器ではなく、四天王になると思います。皆様チェックしてください!
試験直前
試験直前にやることのおすすめは以下である。
受験票に写真が必要(2.4cm×3.0cm)
会場の近くには写真を撮るところがない。前日までに準備をしておくことをオススメする。
ディバイダーはあった方が良い
正直最初はいらないだろ!と思っていたが絶対にあった方が良い。最終的に見えないP波を予想するのに使う。必須。
マイスターチャンネルで復元を見ておくと良い
問題用紙は回収されるため、完全な復元は存在しない。ただマイスターチャンネルで簡単に復元されている。見ておけばどのような内容が出されるかもわかるし、再度狙われる可能性がある問題も潰せる(実際にペースメーカー移動と移動性ペースメーカーは出た)。受験で過去問解かない人いないでしょ?
試験当日
東京の試験会場は流通センターで浜松町からモノレールで10分ほどのところである。受験者が多く迷うことはまずないだろう。駅について思ったことは、「人が多いな!」「若いな!」である。実際受験会場には1500人ほどがエントリーしており、研修医くらいの年齢と思われる層がマス層であった。
受験会場はローソンとタリーズが近くにあるが、それ以外はほとんど何もない。会場内は飲食禁止であるので、事前に取っておくこと。
試験会場に着くと非常に横に長い。自分の席がある縦列を見つけて、後ろ側にある多数の入り口のうち一番近いところから入っていく。机は2人で並んでかける形であった。チャラは左端の方であった。折角の機会であるので、会場を左端から右端へ散歩してみることにした。お分かりの通り、試験会場は縦に出入りする動線なので、横断していた受験生は私だけである。受験生の皆さん、あれは私だ。
やることもないので散歩しながら受験生を観察することにした。皆直前なので勉強しながら試験を待っていた。持っているものはタブレットが半数、3割ほどがgrade up 講座、2割ほどが完全攻略マニュアルである。ただ、空席もパラパラ目立った。2割ほどは会場に来ていないようであった。そして、駅での印象通り比較的若い層が受験者には多かった。もちろん中にはチャラと同世代の方々もおられた。
会場の注意点は3つである。まず時計がない。次に空調がやや暑め。最後にトイレが少ない。
試験内容
試験は90分で50問を解く形式であり、マークシートである。開始10分前に注意事項が説明され、途中退席ができないことを知らされる(ただしこの試験は途中退席する余裕などない)。
チャラは事前にいくつか戦略を決めてテストに臨んでいた。
チャラが決めておいたこと
事前に一問にかける時間を決めておく(日頃からその速度で解く。考えるとせん妄に陥るため)
解きながら、見直す問題、解けない問題にチェックをつける(解けない問題も一応選んでおく)
30分時点で一度現状から戦略調整をする
60分で一周する。5分で「2つ選べ」「誤りを選べ」を間違えていないかチェック。見直したい問題を10分でチェック。ここでマークシート記載。10分でどう考えて解いたかを思い返しながらもう一周。最後5分でわからなかった問題にアタックする。
本番は65分で一周することになり、2問分からない問題があった。結局満点合格はマイスター狙いの方々のことなので割り切って捨てることにした。体感としては、30問は基本問題、10問は罠ありor精読必要、10問は難問といった印象である。
一番のピンチは45分時点で尿意を催したことだが、集中し直したら引っ込んだ。膀胱ナイス!
退席時は番号順に出ていい人が指示される。ところで指示する人はとても声を荒げていた。言うことを聞かない受験生がいたのであろうか。
チャラは受験後次のお仕事があったため速やかに移動したが、会場前では答え合わせをしている受験生たちを沢山観測した。人間は何歳になっても試験後の答え合わせを楽しむようだ。
試験内容の感想は、ペースメーカーや先天性心疾患をもう少し勉強しておけば良かった。。。という反省半分、ここまで心電図が読めるようになった!という気持ち半分である。
最後に
合格しているかは微妙なところであるが、間違いなく日常臨床に活かせる有意義な期間であったと思う。マイスターを取るモチベーションは現状なく合格できればチャラの心電図検定はお終いだ。これで病棟に心電図で呼ばれても困ることはないだろう。ただ、忘れてはいけないなと思うのは心電図はあくまでも手段の一つだ。治療まで完遂され日頃からお世話になっている循環器の先生方に再度感謝の気持ちを表明し、このnoteを締めたい。