#1 「この人は困っている人を見捨てない」中村哲記念講座開講(2024)
1.はじめに
ご覧いただきありがとうございます。九州大学の中村哲先生記念講座ティーチング・アシスタント(TA)を務めますH.H.です。このnoteでは、2024年秋学期の中村哲記念講座の授業の様子をTAが交替で発信していきます。今回は、10月2日(水)の第一回授業の様子をご紹介します。
中村哲医師の意思を次世代に継ぐため、母校である九州大学は2021年夏学期に中村哲記念講座を基幹教育総合科目の授業として開講しました。4年目となる今年は「中村哲記念講座 : 医療支援と農村復興事業の実践から考える平和と自然」というタイトルで秋学期に開講しています。
講座の詳細は、2024年授業案内ポスター(哲縁会制作)もご参照ください。
2.教員あいさつ・関連団体紹介
授業の冒頭では、担当教員の鏑木先生からのあいさつと7名のTAの自己紹介がありました。鏑木先生は、授業の目的や趣旨、進行の流れについても説明しました。
その後、2名のTAが、福岡市天神を本部とし、中村哲医師のパキスタンでの医療活動を支援するために結成され、現在も医療や農業支援を続けている「ペシャワール会」と、中村哲医師の志を継承する学生団体「哲縁会(てつえんかい)」について紹介しました。ボランティアやメンバーの募集も行っていますので、興味のある方はペシャワール会と哲縁会のホームページをご覧ください。
3.ドキュメンタリー「良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの」
次に、ドキュメンタリー「良心の実弾~医師・中村哲が遺したもの」(KBC制作, 2020年)を視聴しました。この作品は、中村哲医師の家族、同窓生、現地ワーカーなど、生前に交流のあった人々へのインタビューをもとに構成されており、ハンセン病の治療や井戸掘り、用水路建設などの活動も描かれています。インタビューを通して、中村哲という人物の核心に迫り、より多面的に理解することができる内容でした。
映像を通じて中村先生の活動を目の当たりにすることで、現場で何が起こっていたのかを具体的に想像しやすく、視聴者に強い印象を与えます。同時に、想像力が刺激され、内容の深さに触れることで、視聴後には喪失感や放心状態に近い余韻が残る作品でした。
学生たちはそれぞれ、中村先生の「魅力」に気づいたようです。特に「議論はいらない、行動あるのみ」という言葉や、一貫した生き方が心に残ったという声が多くありました。中村先生は、目の前で傷つき命を落としていく人々を前に、議論よりも行動を重視せざるを得なかったのかもしれません。
ドキュメンタリーの最後に、長年看護師として中村先生を支えた藤田さんが「中村先生の魅力とは何か?」という問いに対し、数秒の沈黙の後「変わらなかったから」と涙ぐみながら答えるシーンが、特に印象的でした。「この人は絶対に困っている人を見捨てない、だからこそ安心してついていけた」と語る姿が胸に響きました。学生たちが感じたことを大切にし、それぞれが深く考える時間になったと思います。
ドキュメンタリー上映後、鏑木先生は中村哲医師の経歴や、活動地の歴史や地政学などの基本知識について説明しました。
4.次回予告
以上が第1回の授業の内容です。学生一人ひとりが中村先生の志や想いに触れ、心に深く刻まれた時間になったと思います。
次回の授業テーマは「中村哲の初心」です。鏑木先生が、中村哲医師の具体的な仕事について講義を行います。今学期の履修生20名は、次回からグループに分かれて事前配布された資料をもとに、より深いディスカッションを行います。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。