音楽:chill-out musicとは
言葉のニュアンスから考えてみる
最近、寒くなってきましたね。薄着で寝たせいか、今朝はひたすら寒かったです。ニトリのNクールの効果も抜群でした。
この冷える感覚のことを、英語では「chill」と表現したりします。イメージとしては、なんか風邪ひきそうな寒さ、寒気といった感じでしょうか。ぞわっとする感じですね。
このネガティブな言葉に「out」を付けると、「落ち着いた、リラックスした」といった意味になります。
Cambridge Dictionaryで調べてみると、以下のような説明があります。
UK:to relax completely, or not allow things to upset you
例文:I'm just chilling out in front of the TV.
出典:Cambridge Advanced Learner's Dictionary & Thesaurus, Cambridge University Press
US:to relax instead of worrying or feeling anxious
例文:If anything major happens we’re going to find out, so let’s chill out and just do what we need to do.
出典:Cambridge Academic Content Dictionary, Cambridge University Press
したがって、chill-out musicとは、落ち着いたムードの音楽ということになりますね。
そもそもの定義は?
この質問に対する回答は、「ない」ですね。なぜなら、人によって「落ち着いた、リラックスした」音楽が異なるからです。
さらに、多くのジャンルとも関りが深く、chill-out musicをジャンルの一つと捉えない方が良い気がします。特に結びつきが強いのは、Hip Hop, R&B, Jazz, Houseあたりでしょうか。
Instagramなどで#chilloutで出てくるものの中には、完全にEDMだよね、ってものもありますし。笑 私からすれば微塵も「落ち着いて」ないものでした。
Relaxing musicとの違い
ただ、「落ち着いた」音楽ならrelaxing musicで良くない?と思うわけです。
私の理解では、relaxing musicは非常に大きな括りであり、その一部分にchill-out musicがあると考えています。
たとえば、瞑想音楽などはrelaxing musicであってもchill-out musicかと聞かれると微妙ですね。
肝心なのは、「chill」という状態との相対的な比較をもってしてchill-out な音楽であるかどうか、ではないでしょうか。
たとえ話で恐縮ですが、
・寒気がする日に温かいココアを飲んだとき
・肌寒い日に、ベランダでブランケットを肩にかけながら黄昏ているとき
・不安で気持ちが焦っているときに、一呼吸置いて問題に向き合うとき
の感覚を呼び起こすような音楽をchill-out musicというのではないでしょうか。
それと、もう一つ。ビートがかなり重要な位置を占めています。スローなテンポでゆったり乗れるビートが好まれて使われますね。Relaxing musicの場合は、浮遊感のあるシンセサイザーの音が○○ヘルツでずっと続く、みたいなものを含みます。
Chillという略語
Chill-out は、頻繁に「Chill」と略されます。しかし、この略し方をすると意味が反転するので些か問題があるようにも思います。
最近では、日本でもYouTubeチャンネルChilledCowの動画が認知されていますよね。これも「out」が抜けています。(ただ、細かいことは置いておいて、とても重宝しているチャンネルです。)
日本では、こういったノリを「チルってる」と表現したりもするようです。なんか違うような…。チロルチョコみたい。
個人的には「out」が重要なのではと思うのですが。まあ、このへんは文化的な背景もあるでしょうし、大衆が理解できるのであれば問題ないのでしょう。
*追記
実は、chillという言葉には「寒気」の他に「鳥肌が立つような」という意味合いがあります。よく、海外の方が腕をさすりながら「Chilled!」と言っていますが、「鳥肌立ったんだけど!」って意味ですね。
ですので、chill-musicというと鳥肌が立つような音楽という言い方もできますね。
そうなってくると、chill-out(落ち着いた)かつchill(鳥肌が立つような)musicもあり得るということになります。
この観点から考えれば、chillという略もOKですね。ただし、chill-outだけどchillじゃないとか、chillだけどchill-outじゃない音楽もあり得ることには注意が必要かなと思います。
Lo-fi Hip Hopとの関係
Chill-out musicの代表格と言っても過言ではないのが「Lo-fi Hip Hop」です。ただ、関係性は若干複雑かと思います。
まず、Hip Hopはジャンルですね。そして、lo-fiは「Low-Fidelity」の略とも言われておりますが、基本的にノイズや生活音などが含まれたりする、完璧な録音環境や高音質をあえて求めない音楽のことを指します。
したがって、lo-fiなHip Hopなわけですから、chill-out musicに含まれることも含まれないこともあると思われます。
したがって、ある曲に対して
・ジャンルは何か
・Lo-fiか否か
・Chill-outか否か
といった特徴づけをすると、chill-out musicとlo-fi musicとの関係が整理しやすくなるのではないでしょうか。Lo-fiとchill-outは音楽を形容する言葉ですので、「この曲のジャンルはHip Hopで、lo-fiかつchill-outだよね」みたいな使い方になるのかなと思います。
ただ、実際のところlo-fi musicはchill-outである傾向が強いです。Chill-out musicがlo-fiであるとは限りませんが。そういった意味で、Chill-out musicはlo-fi musicを含むと言っても問題はなさそうです。
また、「chill-out musicが好き ⇔ lo-fi musicが好き」という人がほとんどではないかと思います。これは、ノイズや生活音から「chill-out 」さを感じ取るからなのかもしれません。
Jazz (Hip) Hopとは
これも、chill-out musicの代表格の1つ。おそらく、lo-fiかつchill-outな曲を目指すと、自然にJazzとHip Hopの間になるのかもしれません。
Lo-fi Hip Hopと近いものがあり、chill-out musicに含まれると言うべきなのでしょう。Jazzはもともと観客の声が入っていたり、MCが入っていたり、ノイズが入っているこも多いですよね。ここらへんも、lofiと関連が強いところですね。
ちなみに、Jazz Hopがありなら、Chanson Hopもありでは?なんて思ったりしています。
アコーディオンのような音をメインにしてlo-fiかつchill-outな曲を作ればできるような気がしています。
最後に
色々と書いてみましたが、もしかすると間違っている部分もあるかもしれませんし、今後明確になっていく部分もあるかと思います。
一つ正確に言えることは、おしゃれなBGMを作ったときに何て表現すればよいのか迷ってしまう、ということですね。付けるタグも自然と多くなってしまうでしょう。
一方で、厳密に細分化されてしまうとあーだこーだと論争が起きやすくなるので、そういった点からは今ぐらいのゆるさがある、まさに「chill-out」な世界であって欲しいなという気持ちも。
さて、こんなことを考えながら作ったミニアルバムを、宣伝がてら載せておきます(しつこくてすみません、出来上がりがついつい嬉しくて…)。おそらく、lo-fiだけどchill-outじゃないとか、chill-outだけどJazz HopではなくRock寄りとか、色々混ざっていると思います。楽しんでいただけましたら幸いでございます。
Dr. モンブラン
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