帝王切開の麻酔 2024~嘔気嘔吐の原因と対策②痛み~
こんにちは、産科麻酔科医ドクターまるです。
今回お話しするのは、帝王切開の麻酔管理中に起こる嘔気嘔吐の原因、痛みについてです。
痛みと嘔気
痛みと気持ち悪さは、一見関連がないように見えます。
しかし、術中の痛みと、術中の嘔吐は相関すると言われています。(Tan HS, et al. Pract Res Clin Anaesthesiol. 2020; 34: 735-47.)
鎮痛薬の選択
脊髄クモ膜下麻酔にどのような薬剤を投与していますか?
局所麻酔は、どれくらいの量を入れていますか?
麻薬はどうしていますか?
局所麻酔薬
一般的に帝王切開の脊髄クモ膜下麻酔に使用する局所麻酔は、ブピバカインです。
ブピバカインの必要量について、くも膜下オピオイドを併用すると
✓ED95 11.2mg(Ginosar Y, et al. Anesthesiology. 2004; 100: 676-82.)
✓ED95 13.0mg(Carvoiho B, et al. Anesthesiology. 2005; 103: 606-12)
という報告があります。
つまり、ブピバカインは2.3~2.6ml必要であると言えます。
フェンタニル
フェンタニルは、手術操作に伴う疼痛を軽減する作用があります。
そのため、くも膜下腔にフェンタニルを投与することで、術中の嘔気を抑えられると言われています。
フェンタニルの投与量は、10~15㎍(0.2~0.3ml)が良いのではとされています。
(Carvalho B, et al. Int J Obstet Anesth. 2012; 21: 29-34.)
モルヒネ
モルヒネは、硬膜外麻酔併用では、使用しない方が多いと思います。
しかし、脊髄クモ膜下麻酔単独の場合、長時間作用のモルヒネを使用することで、術後の疼痛を抑えることができます。
モルヒネは、その使う量と嘔気の発生に相関があるため、必要最低量にとどめることが、嘔気嘔吐の対策として大切です。
そして、長期作用型であるため、術後長時間の管理が必要となります。
まとめ
帝王切開の疼痛管理をすることで、嘔気嘔吐の予防にもつながります。
特に、麻薬の使用は疼痛コントロールに有効である反面、使用量によっては嘔気を助長してしまうため、最適量の使用を心掛けましょう。
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