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神々の医療(Quest For Medicine)第2章 クエルナバカ(イヴァン・イリッチ:医療の復讐)Part.1


悪化する現実!?

前章でオアシス病院での治療は3週間で200万円~250万円と書きました。しかし副作用が多く、かつ成功率の低い、現在日本で行なわれている、厚生労働省が認める抗がん剤、放射線、手術による治療も、実は相当のお金がかかっているのです。

末期がんの治療に1~2ヵ月濃厚な集中的抗がん剤治療を受け、しかも個室に入ると、健康保険、民間の生命保険をきかしても200万円前後の個人出費は止むを得ないことがしばしばあります。

言い換えれば、だれかが、あるいはどこかが負担するにせよ、いわゆる『保険のきくがん治療』にも、実は数百万円のお金が消費されているのです。なぜ、これほどの巨大な金がかかるものなのでしょうか?

そして悪いことに医療の高額化の傾向には、これからますます拍車がかけられていく気配があります。MRI、CT、骨シンチグラムと、診断にさえ巨大な装置が用意されます。一昔前は医者は聴診器一つでやっていたものです。せいぜいレントゲンです。

それが、たったの75年前だということに気づき、あらためて驚かされるのです。そしてその結果、ぼくたちの健康は増したかというと、決してそうではないのです。たしかに寿命は延びたかのように見えますが、乳幼児死亡率が減ったことと、寝たきり老人が増えただけで、実質的にはほとんど変わっていないのです。

脱病院化社会

そして、さらに憂慮すべきことに、医療そのものによる『医原(イアトロジェニック)病』が急増しているのです。そのことを多くのデータを駆使し、綿密に証明しているのがイヴァン・イリッチの『脱病院化社会』という本です。

 この本は1976年イギリスで出版され、日本では1979年に晶文社から翻訳が出版されています。ずいぶん昔に書かれているのに、その新しさは失われるどころか、現代にあって、ますます斬新さを輝かせ始めています。現代医療は、病を治すことができないでいるのみならず、病気をつくりだしているとイリッチは主張するのです。ひょっとすると、勢います現代の『がん』は、一種の『医原病』とさえみなしたほうがいいのかもしれません。  

 「脱病院化社会」冒頭部分の引用

その、冒頭を引用してみます。

「過去三世代の間、西欧社会を悩ましてきた諸疾患は劇的に変化してきた。ポリオ、ジフテリア、結核は亡びつつあり、抗生物質の注射で肺炎も梅毒もなおる。一世紀の間に大量に病死者を生む多くの細菌がコントロールされるようになり、現在の死亡者の3分の2は老年と関係がある。

 若年で死亡する人々の多数は事故、暴力、自殺などの犠牲者である。このような健康状況の変化は一般的に病気の減少と同義であるとされ、医学的ケアが質的にも量的にも向上したことのためだとされる。ほとんどすべての人が、医師の技能なくしては一人の友人さえも生存していなかったろうし、元気でもありえなかったと信じているにしても、実際には疾病の変化と医学の進歩には直接の関係は存在しないのだ。

 この変化は政治的・技術的変様にかかわる変数であり、この変様は医師の言動に反映される。それは準備・地位・高価な装置(保健専門医が誇りに思う)を必要とする活動と有意の相関があるわけではない。

 さらに、過去一五年間における新しい疾患という重荷の大部分は、病める人々、あるいは病む可能性のある人々のために医療が介入したことの結果であるとも言え、その割合は次第に高くなっている。それは医師がつくるもの、すなわちイアトロジェニックなのである。

 医学のユートピアを追求して一世紀たつが、現在の一般的知恵に反して、医療サービスは、実際にみられる余命に変化を与えるほどの役割も果たしていなっかた。現代の臨床ケアの大部分は、疾患の治癒にとって偶然のものにすぎず、医療によって個人および集団に及ぼされる障害は重大である。こうした事実は明らかであり、実証されているが、おしかくされているのである。」                           

イリッチが記す「本当の理由」

普通、私たちは、どんなに現代医学が無力であっても、少なくとも抗生物質、ワクチンの発見で結核、ポリオをはじめ、多くの伝染病が克服されたと考えています。しかし、イリッチはそれすら否定します。こういった伝染病が少なくなったのは、現代医療のせいではなく、下水道の管理、石けんの普及、栄養状態の向上といったものに起因するであるというのです。

 さらに引用します。

「たとえば結核の流行は、二世代以上にわたって頂点をきわめていた。ニューヨークにおける結核死亡率は、1812年には10000人に対して700人とされているが、コッホがはじめて結核菌を分離・培養した1882年には、人口比10000対370にまで低下した。

 さらに療養所が開設された1990年には、10000対180まで低下したが、それでも結核は人間の死因の第2位を占めていた。第二次世界大戦終了後、抗生物質の使用が当然となる以前に、すでに死亡原因の第11位まで落ち、死亡率は10000対48となったのである。

 コレラ、赤痢、チフスなども同様に、医師のコントロールと無関係に頂点にいたり、ついで勢いを減じてきた。それらの疾病は、その病原が理解され、特定の療法が発見される以前に、その毒性を、ついで社会的影響の多くを失ってしまっていた。

 猩紅熱、ジフテリア、百日咳、麻疹の死亡率は、1860年から1965年の間に、15歳以下の小児にあって、ほぼ90パーセント減じているが、それも抗生物質が使用され、ジフテリアの予防接種が広範に行なわれる以前のことである。これらの事実は、一つには微生物の毒性の減退あるいは住宅の改善などによっても説明されようが、最も重要な要因は、栄養が改善されたために宿主(人間)の抵抗力が高まったためと考えられる。」

私が抱く疑問

私がこの本と出会ったのは、およそ45年前で、医者になってすぐの頃です。当時はまだ現代医療の成果を信じていたころです。しかし、45年も医療に携わっていると、イリッチのいいたいことが、身に染みて理解できてくるのです。ぼくたち医者がやっていることは、ほとんど患者のためになっていないどころか、むしろ患者の状態を悪化させているのではなかろうか、という疑問です。

 簡単な例をあげると、医者は、患者が風邪をひいて熱があるということでやすやすと解熱剤を投与します。しかし、発熱はウイルスや細菌に対する生体の一種の防御反応で、熱性の痙攣をおこすほどの状態でなければ、むしろそのまま放置しておいたほうがいいのです。その方が治りが早いのです。

 つまり、これだけ単純な例でも、医者は患者をたすけているのではなく、むしろ治癒を遅らしているわけです。ましてや、高血圧、糖尿病、リウマチ、脳梗塞、心筋梗塞といったもっと複雑な病気においては、どれだけ医者は、余計なことをしているか見当がつきません。

患者として理解しなければいけない事実

医者が余計なことをする理由は、まさに、経済的理由です。医者も食っていかねばなりませんから。風邪の患者に、体をもっと暖めて、ゆっくりと休養をとりなさい、卵酒もいいのじゃない、あるいは熱いお湯に蜂蜜と梅干しを入れて、寝る前に飲むのもいいかもしれないよ、といってお帰りを願えば、商売はあがったりです。そこは最低アスピリンくらいはもっともらしく処方しなければお金にならないのです。

 おそらく、これが諸悪の根源でしょう。つまり、大げさにいえば、資本主義経済のもとにおける医療です。医療行為と金銭の結びつきは、受け付け窓口の存在で、かろうじてその露骨さがカモフラージュされていますが、本質は、いくら払うから、どれほどの治療をやってくれるかという、患者と医者の駆け引きになってしまいます。それでは社会主義、あるいは共産主義のもとで、医療と金銭が切り離されて存在していれば、うまくいくかといえば、決してそうではないのです。

もちろん、世界中の医師達は患者の健康を第一に考え、誠実に診療を行っています。医療費の仕組みにはさまざまな要因が絡んでおり、医師個人の判断だけはどうしようにもならず、各国の医療制度全体の影響も受けている側面があることも、もちろん理解しています。

神々の医療(Quest For Medicine)第2章 クエルナバカ(イヴァン・イリッチ:医療の復讐)Part.2へ続く

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注意:本投稿の内容は情報提供を目的としたものであり、特定の治療法を推奨するものではありません。ご自身の治療に関する決定は現在、治療を受けられている医師と相談の上で行ってください。また、本投稿は、医療制度の一側面についての私個人の意見であり、全ての医師や医療機関に当てはまるものではありません。

<プロフィール>
はみだしドクター・牧瀬 忠廣(まきせ ただひろ)
早稲田大学政経学部政治学科中途退学。熊本大学医学部卒業。ワルシャワ・メディカル・アカデミー研究留学(脳生理学)。86ヵ国を渡り歩き、世界中の代替療法を研究。「サプリで脱・病院化社会」を提唱するべく牧瀬サプリメントクリニックを開院。2000年には【医者に殺されないための 実践ビタミンサバイバル】を出版するなど、医療の国家資格である医師免許を持った医師がそれぞれの症状に対して的確なサプリメントを飲むことができるように指導している。自身が沖縄にて運営するMAKISE LABでは沖縄を中心に自生している「月桃」を用いたサプリメント「JIPANG Ginger」を研究・製造・販売を行っている。また、日本温泉気候物理医学会の会員であり、温泉療法医としての認定も受けている。

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