あれ、呼吸していない!?-第1章 放ってはいけない子どものいびき-【ムッタとヒビト#3】
こんにちは。くんぱす先生です。
医師として働きながら、2児の子育て真っ只中です。
長男:ムッタ(仮)小3
小柄だが、考え方や発言は大人びている。優しい。一番楽しい時間はヒビトと遊ぶ時間だそう。反抗期まだ。
次男:ヒビト(仮)年中
人見知りだけど慣れるとお調子者。ムッタのことが大好き。特技ドヤ顔。
今日は次男ヒビトのお話です。
実はヒビト、夏に手術する予定があります。
病名はこちら。
【アデノイド肥大・扁桃肥大】
ヒビト4歳、初めての入院です。
ここまでムッタもヒビトも大きな病気、ケガなく成長してくれて本当に感謝でしかなかったのですが、初の入院、手術の予定となりました。
この病気は決して珍しくなく度々小児で見かけるものです。
でも余程ひどくない限り、様子を見てしまうことも多いのかなと思い注意喚起の意も込めて記事に書こうと思いました。
きっかけ
小さい頃から風邪っぽくなるとのど鼻が影響を受けやすかったヒビト。
3歳ころからいびきをかいていました。
大人も疲れているときや風邪気味のときはかきますよね。
なので、あまり気に留めていませんでした。
そして、風邪の期間が過ぎると(だいたい2週間~1か月程度)改善していました。
年少の夏のある日、夫が
『ねえ、ヒビトさ、寝てるとき呼吸が止まってるときがあると思うんだけど。』
と教えてくれました。
私は自分が寝ているとき、なかなか起きないタイプです。
夫は物音とかに敏感で結構すぐ起きるタイプです。
そう、寝ているときに地震が起こった時気付くタイプ(夫)と全く気が付かないタイプ(私)。
そんな夫がヒビトの無呼吸に気付いてくれたのでした。
睡眠時無呼吸(小児)
睡眠時無呼吸症候群は、成人と小児では基準が異なるらしいのです。
成人:【10秒以上の呼吸停止が、1晩(7時間の睡眠中)に30回以上、または1時間に5回以上ある】
小児:【無呼吸時間が10秒に至らなくても、2回分の呼吸停止があれば無呼吸と診断できる】
ヒビトの場合、6秒程度の呼吸停止がありました。2回分以上の呼吸停止だと思われました。
さらに、学会のHPは以下のように続きます。
小児において、【いびきをかく】こと自体が異常であったことをこの時知らされます。(私は医師ですが小児科ではないので疎いのでした、、)
そう、アデノイドや扁桃腺は口をあーんと開けて診るだけではわかりにくいのです。解剖学的にはこんな位置にあるのです。↓
近所の耳鼻科へ行ってみる
何はともあれ、無呼吸を放っておくわけにはいかないと、一番近所の耳鼻咽喉科を受診しました。
そこでは
『うーん、鼻水もありそうだから風邪の影響もあるかなと思うよ。見える範囲では扁桃はそこまで大きくなさそうだしなぁ。紹介状希望あれば書くけどどうする?』
と言われ、一旦ひよってしまう私。
『じゃあ、風邪っぽくなくなっても症状が残るようだったら紹介状書いてもらいに来ます。』と言い帰宅しました。
睡眠時無呼吸の動画撮影
それでもスッキリしなかったので、とりあえず耳鼻科に提示できる情報集めを始めました。
まずは、実際に無呼吸のときの胸の動きがどうなっているのかを観察し動画に収めることにしました。
そこで驚きの事実が、、
陥没呼吸になっている!
陥没呼吸とは、呼吸するときにみぞおちがペコペコと凹む呼吸の状態です。
どうしてそんな呼吸になるか。
それは、息を吸う時に肺の中に十分に空気を取り込むことができず、努力して呼吸するためです。
要は、努力して息を吸い込まないと体に必要な酸素を取り込めていないよ!という要注意のサインです。
さらに自宅にあった計測器で無呼吸中の酸素飽和度をモニタリングしました。一晩中モニタリングしたわけではないですが、酸素飽和度の低下は認めませんでした。
酸素飽和度の計測器はパルスオキシメーターといって、指に挟むクリップ型のものになります。COVID-19パンデミックの際、在宅療養を余儀なくされた方へ行政から貸し出しも行われていました。
精密な医療機器の割には高すぎないので、我が家は一台持っています。
私は以下の2点の条件で下の商品をチョイスしました。
① 子どもの細い指でも安定して測定できる。
② 脈拍の波形(写真のモニター画面下部にある青い波形)が表示される。
→波形が表示されることできちんとモニターできているかが分かります。測定値が低かった時、きちんと測れていないのか、ほんとに値が低いのか判断に迷わないためです。
陥没呼吸の事実を知った私は、様子見している場合ではないと積極的にアデノイド肥大、扁桃肥大に関して調べました。
内科医ママ、小児の耳鼻科領域の論文を読む
アデノイド肥大、扁桃肥大に対して積極的に手術をしている病院がそれほど多くないということも色々調べる中で分かってきました。
私も医師なので、医師の感情はある程度理解していると思うのですが、自分が普段あまり経験していないことって患者さんに積極的に勧めることはありません。
これが【経験バイアス】というものです。
医師に限らず、人間誰しも持っているバイアスなのですが、手術を日常茶飯事で行っている病院に受診すれば『手術しましょう。』となるし、ほとんどしていない病院に受診すれば『手術はリスクもあるし見送って対症療法で改善するか診ていきましょう。』となる。
なので、受診する前にアデノイド肥大や扁桃肥大が検査で認められた場合、手術を積極的にしたいのかという意向を自分なりにまとめました。
手術の論文を調べ、どんな手術が今主流なのか、その合併症は何か、術後の改善率はどの程度か、術後の生活はどうなるのか、など勉強しました。
その結果、『マイクロデブリッダー』という手術器具を用いた術式の方が手術時間はさほど変わらず、確実にアデノイドを切除でき、術後の睡眠の質やアデノイド残存率の比較で有意に改善している、といった内容の論文を何本か読みました。
マイクロデブリッダーは上記のように成績は優れているようですが、医療機関側がコストをとることが難しくあまり普及していない、とそれらの論文には書かれていました。
そういう背景もあって、マイクロデブリッダーを用いたアデノイド肥大、扁桃肥大の手術は民間病院ではなかなか行っておらず大きな病院でのみ取り扱われているらしい、というところまでたどり着きました。
そして、我が家から通える範囲でマイクロデブリッダーでの手術を頻回にしている病院を見つけることができました。
その病院は私が以前働いていた総合病院でした。
初診で受診するには紹介状が必要
あとは、その病院に紹介状を書いてもらうため近くの耳鼻科に受診する必要があります。
また同じところでもよかったのですが、1回目の受診であまりアデノイド肥大や扁桃肥大に積極的ではないのかなと感じたので、積極的に手術目的でその病院に紹介してますとHPに書いてある耳鼻科②へ行きました。
そこで、無事に紹介状も書いて頂き、準備が整ったのです。
なんと初診が数か月先の予約、、
1月に電話して、初診予約ができるのが3月。
混んでいるからしょうがないのは分かっていたのですが、無呼吸の状態で数か月も様子みることに正直気が休まらないなぁという思いでした。
それから事件が、、
今回は第一章ということでここまでにさせて頂きます。
なかなかここからが大変でした、、
なんとヒビトくん、初診を待たずにER受診することになるのです。
どうなることやら、、
第二章につづく。
第二章ではなぜ小児の無呼吸が放っておけないのか、子どもにどんな影響があるかも合わせて書きますね。
お読みいただきありがとうございました。
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