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「エクソソームサプリメント」とは?

こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
最新の美容施術や美容化粧品で注目されている「エクソソーム」ですが、詳しく理解されている方は意外と少なく、バズワード的な感じで踊らされている方が多い印象です。
「エクソソームサプリメントってどう思いますか?」と言う質問も頂きますので、簡単にまとめてみたいと思います。

【エクソソームとは?】

エクソソームとは、「細胞同士の情報伝達物質」であり、カプセル状の小胞の中に、核酸などの遺伝情報やタンパク質が含まれている構造体です

ある細胞から情報発信をする際に、細胞内で作られた核酸や蛋白質を細胞膜の一部のリン脂質二重膜で包む様にして細胞外にエクソソームとして放出します。

エクソソームを受け取った細胞では、中に入っている核酸や蛋白質が細胞内に取り込まれることにより生理機能が変化します。

幹細胞が増殖した際の培養液上清を静脈内投与することで、マウスなどの老化に似た症状が改善したと言う所見から、「幹細胞治療」や「幹細胞培養上清液」として美容クリニックなどで培養上清液の点滴などが行われていることをご存知の方もいるでしよう。

この「培養上清液」にもエクソソームが含まれており、体性幹細胞の活性化による組織再生や、抗炎症作用が注目され、「エクソソーム治療」や「エクソソームサプリメント」として話題になっている訳です。

【エクソソーム投与は本当に有効なのか?】

ヒトの歯髄や脂肪細胞などの幹細胞の培養上清液や臍帯由来のエクソソームは、静脈内投与や皮下注入することで、胃の酸性環境や消化液にさらされて変質することもなく取り入れられ、体細胞を活性化させられる、と言う見解も、実験レベルでの報告はありますが、医学会で広く認められ確立した治療法と言う訳では無いので、盲信し過ぎない方が良いです。
もちろん一定の効果が出る可能性は否定しませんけどね。

【エクソソームは内服しても有効なのか?】

エクソソーム自体は、ほぼ地球上すべての生物に存在しており、細胞と細胞の間だけでなく、血液や尿にも含まれており、食品として口に入る植物や動物、牛乳などにも含まれています。

実際、牛乳に含まれるエクソソームが多くの研究対象になっており、牛乳由来のエクソソームをマウスに投与することで、認知機能の低下や、痛風や糖尿病・高血圧のリスクにもなるプリン代謝産物の増加、繁殖力の低下などが起きた可能性を指摘する研究報告もあります。

有史以来、生物が口にして来た物は全て多様なエクソソームが入っていたと言う事を考えると、健康に与える影響は少ないとも言えますが、この様な報告は少し気がかりなのも事実です。

コレまで栄養素として扱われている、7大栄養素(蛋白質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ファイトケミカル)などの他に、食物由来のエクソソームが健康に影響する可能性がある、と言うのは興味深いと思いますが、食品に含まれるエクソソームがヒトに対してどの様な効果を起こすのか、は未解明なのが現状です。

哺乳類由来のエクソソームは、通常1000を超える蛋白質で構成されますが、植物由来のエクソソームは、通常28個の蛋白質しか含まない、と言う報告もある上に、基本的には消化吸収されてから体内に取り込まれるので、情報伝達物質として機能する確率はかなり低いと思われますし、例え機能したとしても、極めて効率が悪いはずです。

エクソソームは、生物種により大きさや、含まれる核酸や蛋白質量等も異なっているため、ビタミンCなどのように定量できる、統一された検査法や基準値などは現在確立されていません。

食品由来のエクソソームが、哺乳類の腸内細菌へ与える影響なども研究されていますが、ヒトが食品からどれだけエクソソームを摂取すれば効果的か、といった研究結果も今のところは明確な数値がでているわけではありません。

そう言う意味では、「エクソソーム粉末サプリメントの内服による効果」については、アミノ酸や核酸の材料としては有効とは思いますが、それ以上の効果は期待しない方が良いと思います。

【エクソソーム治療は有用なのか】

エクソソーム投与による効果が期待できるとすれば、同種動物由来のエクソソームを、点滴や注射による静脈内や皮下に投与したり、或いは点鼻などで粘膜から吸収投与させる方法などが考えられ、実際に研究がされていたりします。

とは言え、上記の様に哺乳類由来のエクソソームには1000以上の蛋白質や核酸が含まれているので、どの成分がその効果に関与しているのか、細かく分析することはかなり困難なのが実情です。
東洋医学的に細かい成分は特定せずに、エクソソームを採取する細胞種によって、起きる効果を再現性をもって確認する事が出来るのであれば、単なる美容形成だけでなく、難病治療などにも応用が出来るかも知れません。

【実はmRNAワクチン技術も…】

新型コロナウイルスのパンデミックで緊急承認され賛否両論あったmRNAワクチンの技術も、実は癌ワクチン開発などを目的にして、エクソソームを参考に不安定なmRNAを細胞内に取り込ませて発現させると言う10年近く研究されていた技術があった為に、実現可能となった物です。

リン脂質二重膜構造の中に、人為的に特定の蛋白質や核酸を1000種とか入れた上で、皮下注射や点鼻投与をする事で、何らかの効果が発現できるのであれば、「人工エクソソーム治療」が実現する可能性はありますが、それよりもまず「天然エクソソーム」の有効性や効果の研究が進まないと、難しい気もします。

と言うか、ほとんど研究は進んでいないと言って良いのが現状です。「幹細胞上清液」に含まれるエクソソームとは言っても、歯髄幹細胞由来、脂肪幹細胞由来、胎盤由来、臍帯由来などなど多様な物が使われていますが、その効果は多くの宣伝のイメージと異なり、未知と言って良いでしょう。

本気で有効性を示したいのであれば、エクソソーム商品を製造販売している会社が連携して、大規模な臨床試験を行なった上で有効性を証明するのが良いと思いますが、注射や点滴にせよ内服にせよ点鼻にせよ、大手製薬会社も含めてこの様な動きが無いと言うのが不思議ですよね。

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