GLP-1作動薬の新薬についてと肥満対策
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
なんか肥満症の新薬が出たんだってね!すごそう!と言う話題を頂きましたので、その薬剤についてのお話と、そもそもの肥満対策について、科学的に確認された情報を中立的な立場でまとめてみました。
※本記事のイメージ画像はOpen AI社のDALL-Eにて生成しています。本文記載に生成AIは利用していません。
【「痩せ薬の新薬」について】
デンマークの製薬会社ノボノルディスクが開発した肥満症治療薬「ウゴービ」が、2024年2月22日に発売されました。
保険適用上の肥満症の新薬は、実に約30年ぶりです。「ウゴービ」は腹部などに週1回皮下注射することで、食欲を抑え血糖値も下げ、減量効果があります。
実際に日本人が参加した臨床試験では、最大投与量(2.4mg)の投与を68週にわたり続けた人は、約13%体重が減ったことが確認されています。
「ウゴービ」の投与対象は、医療機関で肥満症という病気と診断され、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを合併しており、食事療法や運動療法の効果が認められず、BMIが27以上か、合併症の有無に関わらずBMI35以上、と言う条件があります。
BMI(Body Mass Index 体格指数)とは、体重(kg)を身長(m)で2回割り算した数値のことで、170cmだとBMI27は約78kg、BMI35は約101kgです。150cmだとBMI27は約61kg、BMI35は約79kgです。
健康診断で引っかかる率が一番低いのはBMI22と言うことで理想体重とされますが、死亡率が一番低いのは25-30と言われています。
そして死亡率が最も高いのは、肥満者では無く、20を下回る人、特に18.5未満の痩せ型の人達です。
BMIはあくまで目安であり、筋肉量の多い人は数値が多くなります。27を超える人で生活習慣病で治療を受けてる人は筋肉量が少なく、逆に死亡率の低い27-30の人達は筋肉量が多いとも言われます。筋肉量の少ない一般人は25-27を目標にするのが良いでしょう。
目標達成後に筋トレなどを行った場合には、27-30であっても病気治療を受けていなければ問題ないとも言えます。
【GLP-1作動薬の問題点】
「ウゴービ」の様なGLP-1作動薬は、糖尿病治療薬として既に国内外で販売されていますが、美容クリニックなどが自由診療で「医学的な裏付けのあるやせ薬」として処方されることが多く、品薄状態が続いていることが問題となっています。
それだけ効果がある、とも言えますけどね。
日本肥満学会は、「医学的に肥満症ではない人に使うべきでなく、痩身 やダイエットなだの美容目的で使う薬ではない」として、不適切な使用を控える様な声明を出していますが、自由診療での処方は続けられています。
肥満症でない人が「やせ薬」として不適切に使用すると、低血糖や膵炎(すいえん)、胆石などの作用で健康を害する恐れもある、とされますが、保険適用で使用する高度肥満の人にもその様なリスクはあります。あくまでリスクより減量効果によるメリットの方が強いと言うだけ。
肥満症は、上記の合併症だけでなく、変形性関節症や睡眠時無呼吸症候群など、様々な疾患を合併しますし、動脈硬化が進行すると、心筋梗塞や脳梗塞にもつながります。
【科学的に正しい減量法とは】
「ウゴービ」の処方適用条件に、「食事療法や運動療法の効果が認められない」と言う条件がありますが、運動だけでは体重を減少させる効果は期待できませんし、むしろ膝や股関節、腰などを傷めてしまう危険性の方が高かったりしますので、正直なところ効果的とは言えません。
加えて運動習慣があろうが無かろうが、中長期的な総代謝量は、誤差程度しか変わらないと言う大規模な生理学研究による知見もあります。「運動習慣は代謝を増やす」と言うよりも「活動により上がった代謝分基礎代謝を減らす」と言う方がより事実に近いと言うことです。
とは言え、運動は無意味と言う訳でもありません。必要以上の食事摂取を続けていると、基礎代謝を最大化させることで、アレルギーなどの自己免疫性疾患や、慢性炎症による動脈硬化の進行などが起こり、適度な運動習慣を持つことでその様な余計な代謝を抑えることで、その様な疾患を抑えられる可能性も指摘されています。
ただ、総代謝量は運動だけでは中長期的に変わらないので、「体重を減らす目的の運動」は有効ではないと言うだけです。
体重を減らすには、食事療法が必要ですが、大切なのは満足感を維持しながら食べる量を必要最低限な量以下にすることです。
自分でコレが出来ない理由は、長年の糖質依存により、食後約2時間後に起こる低血糖とともに起こる、渇望感とも言える強烈な食欲を制御出来ないことにあります。
その為に有効なのが「糖質制限」です。糖質制限反対派は「糖質ゼロは健康に悪い」と言いますが、糖質制限推進派の専門家達は、「1食あたり20g、1日60g以下の糖質」は許容していますので、実は両者の主張はそれほど異なっていなかったりします。蛋白質や脂質については、特に制限はされません。
別の指針としては、食べ物の容積比として、炭水化物源の主食(米、パン、麺など)、蛋白質源の主菜(肉、魚介、卵などを使った料理)、植物主体の副菜を、1:1:1のバランスで食べると言うやり方です。
少なくとも適正体重になるまでは、小麦粉加工品や乳製品は避ける様にしましょう。異性化糖(ブドウ糖果糖液糖など)やダイエット甘味料などを含む食品や飲み物もやめましょう。異性化糖やダイエット甘味料は、自然な糖以上に血糖代謝に異常を起こすことが指摘されています。
間食も上記ルールに従い、小腹が空いた時には、サラダチキン、茹で卵、スルメ、無塩煮干し、無塩ミックスナッツ、などにしましょう。
食事で不足しがちな野菜を摂ると言う意味では、野菜スティックや麺や米の入っていない野菜スープも良いですね。とは言え糖質の多い根菜類は、適正体重になるまでは食べ過ぎない様に注意して下さい。
新鮮な生フルーツあるいは冷凍フルーツは適量(手のひらに乗るくらい)であれば問題ありませんが、ドライフルーツは糖質が多いので、少なくとも適正体重になるまでは避けて下さい。
少なくとも2週間、上記条件に従い空腹感の無い様に食事を続けていくと、いわゆる糖質中毒から離脱が出来て、強烈な渇望感の様な食欲が落ち着いて来ます。
それを確認してから、1日24時間以内の起きている時間にも「水やお茶、ブラックコーヒー以外の物を口にしない時間」を意図的に作ることで、インスリン抵抗性を回復させていきます。最初のうちは10時間程度でも良いですが、無理なく行えそうであれば、12時間、14時間と1週間ごとに延ばしていきます。より効果があるのは、16時間以上と言われていますが、最適な絶食時間は人により異なりますので、一番体調が良いと感じる時間を採用しましょう。
「1日3食しっかり食べないとダメ」「糖質はカロリー換算で5-6割摂る」「脂肪はなるべく避ける」と言う様なことを主張する医師や栄養士も多いですが、1970年代から今までこの様な指導が続けられて来た結果、生活習慣病や肥満の患者数がどうなって来たかを見れば、有効かどうかは自ずと分かるでしょう。
稀に有効な場合もありますが、この様な食事は糖質依存のまま食事量を減らすので、渇望感の様な強烈な食欲に苦しみながらの減量になり、長くは続かずに反動でリバウンドしてしまうことにも繋がります。
食べて良い時間の間は、基本は食事としては1-2食、上記のルールに反しない物であれば、間食も特に制限なしで良いです。むしろ1-2食で補いきれない栄養素を補うと言う意味でも、間食を活用する様にしましょう。
この様にして減量すると、高血圧、花粉症、アトピー性皮膚炎などが自然と正常化したり症状が軽くなる、と言う方は多く、2型糖尿病の方も薬が不要になるケースもあります。
糖質制限をより厳格にした「ケトン産生食」を実践することで、1型糖尿病の人がインスリンを使わずに生活出来ると言う報告もありますし、ガン患者さんの治療効果向上や再発予防として有効性が期待されるとして、治験が進められていたりしますので、病気のある人は主治医に確認し許可を得ながら「ケトン産生食」を継続的に行うと良いと思います。
この様な知識のない医師は「健康を害するからやめなさい。それより1日3食、炭水化物をしっかり食べて体力つけるように」と言うことを言うかも知れませんけどね。
【薬やサプリは減量に不要】
この様に、糖質過多の食事が精神的に起こしている問題を解決しないまま、薬やサプリメントに頼った減量をしたところで、根本的な解決にはなりません。
「医療で認められた痩せ薬」などと言うキャッチコピーを考えたコピーライターは素晴らしいと思いますが、本気で痩せたい人は、ヘルスコーチの助けを借りるのもありかと思います。
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