和式トイレと健康
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
最近のトイレは、椅子の様な便座に腰掛ける洋式タイプが一般的になりました。商業施設などの公衆トイレではウォシュレット機能が無い方が珍しいくらいになってますよね。
今では見かけることが減った和式便器と洋式便器について書いてみました。
【便器の変遷(かなりザックリ)】
昔は便座の下に桶が置いてあり、そこに排泄物を溜めて別の場所の「肥溜め」で発酵させて畑の肥料に使っていました。「汲み取り式」や「ボットン」などと呼ばれたりもしますね。今でもアジアの一部地域や水が貴重とされる山小屋などで見かける形式です。
そこから時代を経て水洗式の和式便器が出来てきます。構造が単純で安価ではあるのですが、流す時に水の量や勢いが必要であり、汚物混じりの水が便器周囲に飛散するので臭くなりやすく、こまめに床に水を撒いて掃除しても、洋式便器と比較すると大腸菌汚染が多く、完全に清潔にするのは難しいことがTOTO社から報告されています。
また公衆トイレにユニバーサルデザインと言う概念が持ち込まれ、身体障害者でも出来る限り使える様な配慮が求められることなどから、しゃがみ込む必要があり脚の力がないと利用が困難な和式便器は減り、自然と洋式便器が主流になりました。水道代も洋式便器の方が安くて済むので、維持費も安くて済みます。便器全体の出荷割合は和式が0.7%程度なんだとか。
【和式便器のメリットとは】
和式便器はデメリットばかりでは無く、メリットもあったりします。
一番のメリットは「便座に触れないで用が足せる」と言うことです。便座自体が無いので当たり前ですが、清潔を求める人の中には、不特定多数が使う公衆トイレでは和式を選ぶ、と言う方もいる様です。
次に用を足す時の姿勢が、様式と和式で異なります。和式便器は深くしゃがみ込んで排泄し、洋式トイレは椅子に座る姿勢で排泄します。
しゃがんだ姿勢では背骨が真っ直ぐになり、力が入りやすくなりますし、直腸の構造が直線化するので、洋式に比べるとスムーズに排便できるといわれています。
ドイツの微生物学者Giulia Enders氏は、欧米諸国ではアジア諸国に比べて、痔や腸にくぼみができて炎症を起こす「憩室炎」を患う人が多く、和式の様な形式のトイレを使用するアジア諸国の12億人には、憩室炎が明らかに少ないと言うことに注目しました。
この理由として、洋式便座で座っている状態だと腸が曲がったホースのような状態になり、余計に息まないと出にくい為に、肛門や腸に負担がかかってしまうので、憩室炎や痔になりやすいと言う仮説が通説となっています。
エンダース氏はこのことから、和式便器の様な形式のトイレの方が、腸や肛門への負担が少ないとして利用を推奨されています。
米国オハイオ州立大学のピーター•スタニク氏らの研究では、洋式便器でも踏み台を用いて膝を高くしてしゃがみ込みと同様の姿勢を取ることで、腸や肛門への負担が減り、実際に便秘に悩む人の便通が改善したことが報告されています。
日頃から便秘傾向の方は、自宅のトイレに踏み台を置いておくとか、外出先でも爪先を立てて少しでも膝を高くして上半身は前屈みにすることで、しゃがみ込み姿勢に近づけると良いかも知れません。
【おまけ:洋式便座の蓋は閉めて流すのが良いのか】
洋式便器を使う際に、新型コロナ禍で話題になったのが、「トイレの蓋を閉めて流す」のが感染予防策として効果的なのか?と言うことです。
イギリスのリーズ大学のM.H. Wilcox教授が行った研究では、トイレの蓋を閉めずに流した場合、細菌が最大で25センチの高さまで飛散したという結果が出ています。
製品により水勢も違うので一概には言えませんが、蓋を開けたまま流すと周囲に微小飛沫が飛散するのは間違いないので、可能であれば蓋を閉めて流した方が良いでしょう。
しかしながら東京医療保健大学の菅原えりさ教授によるノロウイルスを対象にした実験では、蓋を閉めても閉めなくても、排泄物に混じったノロウイルスによる便座汚染は起きている、と言うことが判明していますので、蓋で空間への飛散は抑えられても、便座汚染は防げないと理解しておきましょう。
最近の公衆トイレには利用前にトイレットペーパーにつけて便座を拭く為の除菌用のスプレー剤やジェル剤が設置されてるところも多いので、気になる方は使うと良いですし、トイレ利用後、適切な手洗いを終える前に、鼻や口、目などの顔まわりを触るのはやめた方が良さそうですね。