【「ヌートロピック」ってどうなんですか?】
こんにちは、Dr.K(ドクターコージ)です。
「ヌートロピック(Nootropic)」と言う言葉を知らない人も多いと思いますが、最近サプリメントの広告で目にすることが増えている様です。新規性を感じさせる目新しいキーワードがどんどん出てきますね。
そもそもヌートロピックとは何でしょうか?明確な定義は無いのですが、「健康な人の脳の機能や能力を高め、認知機能の向上や維持に役立つとされる物質の総称」と言う理解が一番適切な感じです。
アーユルヴェーダや漢方医学などで使われるハーブ、生薬、食材も含めれば、使われて来た歴史は長いのですが、「ヌートロピック」という言葉自体は、1970年代前半にルーマニアの心理学者/化学者のコルネリウ・E・ジュルジアが、ギリシャ語の「nous(考える)」と「tropos(方向、変化)」を組み合わせて作った造語です。
以前は脳機能を増強する作用のある特殊なキノコや合成薬物などが「スマートドラッグ」として有名でしたが、最近ではカフェイン、テアニン、クレアチンなどの一般的な物質や、認知症やパーキンソン病、睡眠障害などの治療薬も含めた概念になっており、「抗知性薬」と言う呼び方をされることもあります。
米国では、ブレインヘルスに関するサプリメントとしてのヌートロピック市場が急成長をしており、この影響で日本でも「ヌートロピック」を謳う製品が増えてきています。
単純にヌートロピックと言っても、かなり幅広い効果があり、ヌートロピックを食品成分として摂る場合、医療や治療にはなりませんが、欧米では臨床研究で効果が証明されたとされる製品もあります。
まだ解明しきれていない成分や物質も多いのですが、代表的な効果には次の8つがあげられます。
【ヌートロピックの効果】
〈脳機能の更なる向上〉
・モチベーションの引き上げ
・注意力、集中力の向上
・記憶力の向上
・気分を落ち込みにくくする
〈脳を休める〉
・不安感やストレスの緩和
・疲労感や倦怠感の緩和
・睡眠の質の向上
〈加齢性変化の抑制〉
・認知機能を健康的に維持する
世界的に認知症に対して早い段階からの予防的な介入が望まれており、認知症予防の需要は高まっていく一方ですが、海外では、「脳機能の更なる向上」や「脳を休める」目的の需要がかなりある様です。
ヌートロピックの多くは、古くから食品や生薬として用いられていたことから、安全性についての確認は出来ていますが、科学的に有効性が証明されている物は少ないです。
ですから、「ヌートロピック」と書かれている製品をしっかり見極められる様に、知識を身に付けることが大切です。
そもそもですが、普段の食事の中にも、ヌートロピック成分が意外と含まれていることを知っておきましょう。
お茶に含まれるテアニンや、神経伝達物質の合成を促すビタミンB6、必須アミノ酸でバナナや鶏肉に多く含まれるトリプトファン、青魚に多く含まれるDHA(ドコサヘキサエン酸)や荏胡麻、亜麻仁、藻類などに含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)などのオメガ3不飽和脂肪酸などです。
あなたも一度は、睡魔と闘うときにカフェインを含むコーヒーやお茶を飲んだり、リラックスしたいときにハーブティーを飲んだり、疲れた時に甘い物を食べたりしたことがあると思います。これらの習慣は「ヌートロピックの活用」そのものなんです。
乳児向けの粉ミルクや学童向けのパンなどに、脳機能の向上を期待してDHAが添加されている製品がありますが、これらも「ヌートロピック」と言えます。
より広い意味では、糖質制限やケトジェニックダイエットなどの食事法も、脂質由来のケトン体をエネルギー源として使うことで、神経細胞の機能を活性化させると言う意味では、ヌートロピックの活用法と言えます。
ケトジェニックダイエットで多用される、ココナッツオイルやココナッツ由来のMCTオイル(中鎖飽和脂肪酸)やBHB(ケトン体の一種であるβ-ヒドロキシ酪酸)なども、欧米ではプロテインサプリメントにヌートロピックとして配合され人気を博しています。
ヌートロピックは脳や神経に働きかけますので、特に抽出された高用量の単一成分のサプリメントなどは過剰摂取に気を付けることはもちろん、他の医薬品やサプリメントとの相互作用にも注意が必要です。
例えば、少し前に日本国内で起きたカフェイン過剰摂取による死亡は、海外でもたまに起きています。健康補助食品(サプリメント)は食品だから安全と過信しすぎないようにしましょう。
別の種類のヌートロピックや医薬品を組み合わせる場合も、料理や漢方薬などで古くから組み合わせて使われている様な場合以外は、注意が必要です。
不安のある人は理解のある医師や薬剤師、管理栄養士などに相談するとよいでしょう。