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Lynyrd Skynyrd – Southern By The Grace Of God (1988)

 『Southern By The Grace Of God』は、当時ちりぢりになってしまっていたLynyrd Skynyrdのメンバーたちがドラマチックな復活を遂げたライブを、まるでドキュメンタリー映画のように捉えたアルバムだ。リード・シンガーRonnie Van ZantとギタリストSteve Gainesらを失った1977年の航空事故からちょうど10年を迎えようとしていた87年の9月、Charlie Danielsが主催していたチャリティー・コンサートにおいて、1回限りの再結成ライブという触れ込みで行われた。そこでのSkynyrdの唯一の誤算といえばファンのあまりにも熱烈な歓迎ぶりで、結果としてツアー化したこの公演はじつに3年にわたる大仕事へ発展していった。
 Ronnieの父親であるLacy Van Zantの紹介を受け、弟のJohnny Van Zantをボーカルに据えた新バンドが登場し、当時と変わらない剛健さを湛えたロックを聴かせる。Artimus Pyleのタイトなビートにのせた「That Smell」はクスリやアルコールを非難した暗いナンバーで、どうやら前年に飲酒運転事故を起こしたAllen Collinsにも向けられているようだ。「Gimme Back My Bullets」のサウンドには生のままの泥臭さがあり、「What's Your Name?」でのBilly Powellのブギウギ・ピアノは底抜けに明るい。
 アルバムのハイライトはラストの3曲で、「Call Me The Breeze」からの2曲にはDanielsやDonnie Van Zantを含むゲストが飛び入りで参加し、カントリーらしい暖かな様相だ。看板のトリプル・ギターとThe Raelettes風の女声コーラスを復活させ、南部人の自信さえも取り戻したバンドは「Sweet Home Alabama」を力強く歌い上げる。だが何をおいても、最後の「Free Bird」で起こる、観客の荘厳な大合唱にまさる感動はないだろう。