Champion Jack Dupree – From New Orleans To Chicago (1966)
ブルー・ホライゾン・レーベルがCBSとの提携を勝ち取って世界へ羽ばたく前は、Mike Vernonはデッカのスタジオを借りてシングル向けの小規模なブルースのレコーディングを積み重ねていた。1966年に、当時ヨーロッパへ移住していたピアニストJack Dupreeの録音の機会を得たのはVernonにとって素晴らしいチャンスだった。Tony McPheeやKeef Hartleyといったイギリスの実力派ミュージシャンを呼び寄せたところに、偶然Eric Claptonが顔を出したのもまた幸運で、本アルバムは非常に豪華なセッション・アルバムに仕上がったのだった。
だがClaptonのギターによってパワフルなブルース・ロックに仕上がっているのは「Shim-Sham-Shimmy」くらいで、あとはDupreeの多彩なピアノ・ブルースのバリエーションが並んでいる。主役を立てることに関してはやはりMcPheeのスライド・ギターに勝るものはなく、スロー・ナンバーの「Ain't It A Shame」や「Won't Be Fooled No More」など傑作揃い。「Ooh-La-La」はDupreeの持ち味の一つであるコテコテのニューオリンズ・ブルースだ。「Pigfoot And A Bottle Of Beer」に出てくるモチーフはBessie Smithがかつて得意とした歌を思い出すが、Hartleyの回想によればこれはセッション中の即興から生まれた一曲であるという。時どきで印象に残るがちゃがちゃしたウォッシュボードの軽快なリズムは、Washboard Samが戦前に残した「She's All In My Life」という曲でも活きている。
Dupreeが英国に残した作品はどれも価値が高く、後にブルー・ホライゾンから発表された『Scoobydoobydoo』はストリングスやブラスが加えられて特にポップな仕上がりとなった。しかし、彼のピアノのスタイルが損なわれることが無かったのは、ひとえにVernonの繊細な心配りのたまものである。