Samurai – Samurai (1971)
Dave Lawsonの洒脱なボーカルをフィーチャーしたジャズ・ロック・バンドSamuraiのルーツは、もともとはアメリカ的なブラス・サウンドを希求していたグループThe Webにまでさかのぼることができる。アメリカ人ボーカリストJohn L. Watsonの脱退後にポリドール・レーベルから発表された傑作「I Spider」は、スムースなジャズを大々的に取りいれたまさに本作の前兆を示したアルバムで、メンバーをほとんど変えることなくバンド名をSamuraiに変えた彼らはグリーンウィッチというマイナー・レーベルからこの唯一のLPを出した。
洗練されたLawsonのファルセットや、Tony Edwardsのサイケデリックの味を残したファズ・ギター、Lennie Wrightのクールなヴァイブなど、Samuraiには多彩な武器がある。さらにアルバムのいずれの曲も印象的で、記憶に残りやすい。シングル・カットもされた「Give A Little Love」はEdwardsの激しいギター・リフを中心としながらも、対照的なフルートの音色がときおり穏やかな清涼感を放っている。「Holy Padlock」はThe Web時代のファンキーな味を思い起こさせるロックナンバーで、特にきめ細やかなパーカッションが活きた「More Rain」は最も完成されたつくりのバラードである。
Lawsonは後にDave Greensladeのグループで活躍したが、各メンバーが絶妙な間合いで演奏を高めあうジャズ・ロックの理想形ともいうべき本作は、彼のキャリアのベスト・ワークに挙げるべきアルバムだ。