Vince Guaraldi & Bola Sete – Vince Guaraldi, Bola Sete And Friends (1964)
Vince Guaraldiは、アメリカの国民的漫画『ピーナッツ』のTVシリーズに音楽を提供したことで記憶されている職人気質のピアニストである。だがジャズ・ピアニストとしての彼は、Cal Tjaderとの仕事をはじめとして1962年の「Cast Your Fate To The Wind」の大ヒットなど早い段階からラテン音楽に傾倒したことで知られた人物だった。
Guaraldiは本場ブラジルのギタリストBola Seteとたびたび共演した。最初の作品である本作では、当時すでに完成されていたGuaraldiのピアノ・トリオのスタイルに、情熱的なSeteのボサノヴァ・ギターをいとも簡単に溶け込ませることに成功している。Henry Manciniによる優美なスタンダード・ナンバー「Days Of Wine And Roses」のアレンジは高山流水という形容さえ及ばない絶品の出来で、Seteの完璧なギター・ソロからスムースな合奏に流れ込む構成がこの上なく見事である。「Mambossa」はSeteのオリジナルと思われているが、実際はGermano Mathiasによるサンバ曲「Guarde A Sandalia Dela」を下地にしたものである。耳ざといジャズ・ファンならば、メインで印象的に流れるフレーズがDuke Pearsonの「Sandalia Dela」とほとんど同じであることにも気づくだろう。地味で抑制されたアレンジだが、ドラマーJerry GranelliのリズムとGuaraldiのパーカッシブなピアノが、Seteのギターと機敏に絡むさまが素晴らしい一曲だ。また、本作にはHorace Silverの名曲「Moon Rays」のカバーのほか、美しいボッサ・バラードの「Star Song」とメロディアスな「Casaba」というGuaraldiの2つの傑作が含まれている。