Johnny Shines – Masters Of Modern Blues Volume 1 (1966)
インターネットのディスコグラフィーをざっと眺めるだけでは、よく分からないこともある。1940年代から続いたJohnny Shinesの苦闘の日々は、まさにそれだ。41年にメンフィスからシカゴへ渡ってきたShinesは、コロンビアやJOB、チェスといったさまざまなレーベルに録音を残している。そこにはLittle Walterといった名手のサポートもあったにもかかわらず、当時シングルとして世に出たのはほんの数枚で、50年代に彼は一度ブルースの世界から足を洗ってしまったのだ。
復帰後に出たShinesの初めてのリーダー・アルバムは、デルタの香りも節々に感じられる、どっしりとしたシカゴらしいバンド・サウンドが聴きものである。Fred Belowをはじめとしたセッションの名人を何人も迎えているのだから、それは当然といえば当然なのだが。
クラシックの「Rollin' And Tumblin'」や、かつてShinesとともに活動していたというRobert Johnsonの「Walkin' Blues」はシンプルな編成ではあるものの、渋いスライドの音色は堂々としていてとてもブランクがあったとは思えない。スローなテンポの「Trouble Is All I See」、力強い仕上がりの「Sweet Home Chicago」を聴けば分かるように、Shinesのボーカルにはソウルがみなぎっている。そうした伸びやかなShinesのプレイにWalter HortonのハープとOtis Spannのピアノが実に心地いい間合いで乗せられた。「So Cold In Vietnam」や「Black Panther」など社会派のナンバーがある一方で、Belowが変わったビートを刻む「Two Trains Runnin'」のような歌も興味深い。
70年代以降のアルバムやコンサートでは、Shinesはアコースティックの弾き語りを信条とするようになる。実はそうした円熟の芸の原点は、逆説的に本作のようなシカゴのサウンドにあったのだ。