Lem Winchester & Benny Golson – Winchester Special (1959)
Leonard Featherに腕を買われ、花のニューポートの舞台でデビューを果たしたジャズ・ヴァイブ奏者Lem Winchesterが、Ramsey Lewisとのコラボを経た後に発表したのがこの『Winchester Special』である。当時Jazz Messengersから独立したばかりだった名手Benny Golsonを迎えた本作では、ファンキー・テナーの熱っぽさと、ヴァイブの持つ都会的でクールなセンスとが生み出すコントラストが無二の魅力となっている。
Winchester自身のオリジナル曲「The Dude」は特に注目すべきハード・バップ・ナンバーで、Golsonのサックスのキレと音楽全体の抑揚が最も調和しており、控えめでエレガントなTommy Flanaganのピアノの見せ場もしっかりと用意されている。
ニューポートのコンサートでは「Now's The Time」をはじめとして超の付く定番曲が目立っていたが、本作は「Mysticism」や「How Are Things In Glocca Morra」のような通好みの選曲が光っている。前者のWinchesterのテクニカルなソロは特に手数が多い。奏者としての彼の技術が高いことの証明だ。
銃の事故により急逝してしまったため、Winchesterが残した作品は決して多くない。しかし、ニュー・ジャズ系列に残した諸作やJohnny "Hammond" Smithとの共作アルバムなどは、いずれもソウル・ジャズの名品ばかりである。Johnny AceがSam Cookeに並ぶシンガーになったかも知れなかったのと同様に、彼もまたMilt Jacksonと並ぶヴァイブ・プレイヤーになっていたかも知れない。