見出し画像

German Oak – German Oak (1972)

 第二次大戦中にドイツで使用されていた防空壕の中で思いのままに楽器をかき鳴らすという試みは、70年代当時を生きるデュッセルドルフの5人の若者たちにとっては(恐らく)大いに意義のあることであった。単純な反戦思想や祖国が行った過去の蛮行への怒り、と言ってしまえば簡単だが、ジャンルで括りがたいこのグルーヴの塊は、そういった言葉では到底形容できない複雑な感情の発露にほかならない。
 数百枚の自主製作であり、かつ正確にはライブ録音となる本作において中心となるのは凶悪なフィードバック・ギターと不気味なオルガンのサウンドだ。第三帝国を意味する「The Third Reich」では、Adolf Hitlerの演説を引用するサウンドコラージュも見られるが、一貫してアシッドなジャムを展開しており、前衛的とはいえ人を喰ったような演出はむしろ控えめと言っていい。
 ブルージーなギターと、サイケデリックなオルガンの相互作用もさることながら、恒久的に続くリズム隊の存在感はファンクのようでもあり、硬質なサウンドにはガレージやインダストリアルさえ見出す者もいるだろう。このまさにクラウトロックと呼ぶほかない特有のジャンルレス感は、音楽ファンにとって大いに議論の余地を孕んでいる。
 この手の作品ではおよそ驚くべき出来事ではないが、本作は数枚が外部にリリースされた以外ほとんどのコピーが長年メンバーの手元で眠っていた。サイケデリックやプログレ畑のコレクターの間では伝説化し、幾度となくリイシューされてはいるがその大半は非正規なものだ。また90年代には本作録音当時の未発表音源が出現し、人々を驚かせた。