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Coulson, Dean, McGuinness, Flint ‎– Lo & Behold (1972)

 キャピトル時代の成功を大きく支えていたBenny GallagherとGraham LyleのコンビはMcGuinness Flintから脱退してしまった。残されたメンバーが本作のようなカバー・アルバムを製作したのは、傍から見れば無理もない話かもしれない。しかし、プロデューサーのManfred Mannは、新生バンドの1発目のアルバムを全編Bob Dylanの未発表曲で固めた挑戦的なトリビュート作品にすることにした。
 Dylanのどの原曲よりも先に世に出た本作は、ソングライターDylanの底の知れなさを知らしめただけでなく、McGuinness Flintのバンドとしての実力も示している。The Bandの持っていたルーツ・ロックのテイストには英国流の解釈が施されているが、同時にDylanの詞の独特の息遣いも感じることが出来る。
 収録曲を大別すると、初期の未発曲といわゆる『The Basement Tapes』期に製作された曲に分かれる。冒頭の「Eternal Circle」は60年代前半に作られたナンバーで、かつてThe Byrdsが演奏したようなサイケ風サウンドで歌い上げるのに対し、「Let Me Die In My Footsteps」は大胆にもアシッド・フォークに生まれ変わった。一転してファンキーな「Lo And Behold!」やカントリー・テイストあふれる「Don't Ya Tell Henry」などには、地下室のリラックスした雰囲気が流れている。
 『Biograph』や『The Bootleg Series』の登場によって原曲に触れることが容易になり、本作はDylanファンのディープな欲求を満たす役目自体は終えているが、この比類のない理解度は今もなお驚嘆に値する。アルバム『Lo & Behold』は単なるトリビュート系の最高峰と呼ぶだけでは全く言葉足らずで、70年代ロック屈指の大名盤と呼ぶにふさわしい作品である。