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Johnny Winter – John Dawson Winter III (1974)

 アーティストが自身の本名をアルバムに付けたのなら、そのアルバムにはなにかしらの特別な意味が含まれるはずである。麻薬禍から完全に解放されたJohnny Winterが放った本作は、当時設立されたばかりだったブルー・スカイ・レーベルに移籍して最初のLPで、プロデューサーもRick DerringerからShelly Yakusに代わっている。心機一転の気が否が応でも伝わってくるのが分かるだろう。
 とはいえ、力強いロック、ブルースと軽快なカントリーのブレンドからなる『John Dawson Winter III』においては、Winterのギター・ボーカルと豪快なアレンジが相も変わらず冴えているところに一番の価値がある。冒頭のシンプルなナンバー「Rock & Roll People」をJohn Lennonが書き下ろしたというトリビアは、あくまで本作の特徴のひとつに過ぎない。Derringerは今まで通りに「Roll With Me」みたいな素晴らしい曲を提供しているし、Winterには「Self-Destructive Blues」のような破滅的なブルースを歌う余裕だってあるのだ。
 Elvis Presleyの「Raised On Rock」は原曲のスワンプ色をそぎ落として徹底的にハードなロックに仕上がっている。Edgar Winterの魔術師のようなボーカルを取り入れた「Mind Over Matter」はAllen Toussaintのカバーで、アルバム中で最もファンキーな一曲でもある。女声コーラスを起用したバラード「Lay Down Your Sorrows」は、アレンジこそ西海岸風のAORにも似たきらめきがあるが、後半のブルース・ギターの暑苦しさはまさにWinterといったところ。それに続くのがドラム&ギター(初期のシカゴ・ブルースを思わせる)の編成からなる「Sweet Papa John」というのもやはり彼らしい。