The Box Tops – The Letter / Neon Rainbow (1967)
The Box Topsの特に有名なヒット曲「The Letter」は、当時がサイケデリック全盛の時代だったことを考えるといくぶんアシッド色は薄い。だが本作を通して聴いて、彼らのみずみずしい感覚やR&Bの素晴らしいカバーに触れてみれば、彼らが守備範囲の広いサイケ・ソウル・バンドだったことに気づくだろう。ついでに「The Letter」の持つ意外な先進性にもだ。
The Box Topsの魅力はAlex Chiltonのパワフルな歌声で、彼は「A Whiter Shade Of Pale」のブルー・アイド・ソウル版を難なくこなし、夢の世界を描いたような「Neon Rainbow」は最高のサンシャイン・ポップに仕上がっている。Gary TalleyのギターとJohn Evansのオルガンをしっかりフィーチャーした「Gonna Find Somebody」のサウンドは実に骨太だ。
しかし、バンドのあずかり知らぬところで「The Letter」が録音された1967年、メンフィスのアメリカン・スタジオでは、オーナーであるChips MomanとプロデューサーDan Pennの二人がテープをめぐって一触即発の状態に陥っていた。〈この曲は最高だ。この飛行機の音を消せばな〉と口走ったMomanに対し、Pennは〈そんなことをしたらカミソリでテープをズタズタにしてやる!〉と怒鳴った。結局はMoman側が折れたおかげで、「The Letter」のアウトロで流れるジェット音や「I Pray For Rain」の雨音は、控えめではあるが印象とストーリー性を音楽にもたらした。これはThe Beatlesが「Back In The U.S.S.R.」を出す前年の出来事である。