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Slam Stewart – Bowin' Singin' Slam (1956)

 Slim GaillardとSlam Stewartの二人からなるSlim&Slamは、実に芸達者なコンビであった。猥雑でナンセンスな言葉遊びを洒脱なジャズとともに披露してみせるスタイルで、たちまち戦前のシーンの中で人気を獲得していき、「Float Foot Floogie」などのヒットを生み出している。ベーシストであるStewartの『Bowin' Singin' Slam』は、40年代のサヴォイ時代の録音をまとめたもので、彼の独特なプレイスタイルと心地よいスイングを感じることのできる素晴らしいアルバムだ。
 自らの奏でるアルコのベースとともに1オクターブずらして歌うハミングが、Johnny Guarnieriのピアノと見事に調和する。スローな「I'm In The Mood For Love」や高速の「Firebird」など緩急は自由自在だ。いずれもかつてJohnny Guarnieri Trioの名義で発表された曲だが、Stewartの放つ存在感は他のどのプレイヤーにも替えがたいものがある。
 カルテット編成で録音された「Dark Eyes」と「Play Fiddle Play」ではErroll Garnerがピアノを弾いている。後者はセンチメンタルな曲調だが、たちまち曲芸じみた展開となってタイトルの意味に納得させられる。
 サイドマンとして長く活動したStewartは、70年代以降はブラック・アンド・ブルー・レコードからリーダー作を発表する。本作から30年もの年月を隔しているが、『Bowin' Singin' Slam』で聴かれた古き良きスイング精神は全く失われていなかった。