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Brother Fox And The Tar Baby (1969)

 アメリカのジャーナリスト J.C.ハリスが19世紀に出版した民話をモチーフにしたこのレコードは、ボストンのカルト・バンドFront Page Reviewを前身としたBrother Fox And The Tar Babyが残したサイケデリアの名品だ。民話に登場する〈ター・ベイビー〉とは粘っこいタールで作られたもの言わぬ人形で、それに興味を惹かれた主人公のうさぎどん●●●●●はたちまちくっ付いて動けなくなってしまう……なんとも他愛のない話が由来である。
 ハード・ロックからアシッド・フォークまで、ジャンルに縛られずに自由に作られた彼らの音楽はいずれも素晴らしいもので、まさにター・ベイビーさながらにリスナーを惹きつけるだろう。すべてのトラックの作曲を手掛けたギタリストであるDave Christiansenの幅広い才覚もさることながら、ボーカルSteve Highのソウルにあふれた歌心によってバンドの志向は見事に現実化している。
 ツイン・ギターがさく烈する「Steel Dog Man」は、Blue Mountain EagleやThird Powerと並んでサイキック・サークルのコンピ盤に収録されたヘヴィ・サイケの名曲だ。狂った雰囲気の「Maxie The Meanie」や、ストリングスとエフェクトを活かした「To Your Dreams」、Tom Jones風と形容されているバラード「I Start To Cry」、James Brownを意識した「Crazy John」のごくごくさりげないドラム・ブレイクなど、きらびやかなまでの音楽的な小ネタが本作の最大の魅力である。