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dr_kobaia
松尾和子 – ラプソディー (1975)
松尾和子とフランク永井のデュエットが名曲「東京ナイト・クラブ」をヒットさせたことや、フォーク界のヒーロー泉谷しげるが西岡たかしとコラボして、名盤『ともだち始め』が生まれたことは、ある種自然の成りゆきといえる出来事だ。しかし、離れたシーンに存在していた松尾と泉谷がタッグを組んだ『ラプソディー』は、並ならぬ情熱がたぐり寄せた奇跡の結晶といっても過言ではない。
本作では、松尾のラブコールに応えた泉谷が全トラックの提供とプロデュースを行っている。彼女に〈私の人生を唄った〉とまで断言させたショーは、ディキシーの香りただよう「夜明けのラプソディー」で幕を開け、聴く者の心を奪う。巨匠北村英治のクラリネットをバックに歌う松尾のハスキー・ボイスは踊るように軽快だが、当時泉谷のお抱えバンドだったラスト・ショウの冴えも負けていない。また、プログレ愛好家にも知られるグループのイエローは、ファンキーな「若い人」と淡い夢のような「らせん階段」という、対照的な2曲に貢献している。
しかし泉谷とのコラボレーションが活きているのは、本人もギターで参加した「人情夜曲」や、泉谷の初期のレパートリーとして有名な「出船」といった、シンプルに徹したナンバーだろう。ここでの松尾は夜の華やかさとはまた違う雰囲気を上手くかもしている。特に前者は彼女のために書き下ろされたかのようなハマりっぷりだ。
アダルトな魅力で知られた松尾としては珍しいジャケットも、異彩を放つと同時にアーティスティックでもある。歌謡曲やフォークといったカテゴリはいったん脇へ置いて、並外れた開拓精神を持つこの傑作へ耳を傾けよう。