The Byrds – (Untitled) (1970)
フォーク・ロックを定義した名曲「Mr. Tambourine Man」のころと比べると、『(Untitled)』を発表するまでにThe Byrdsがいかに変遷と発展を繰り返してきたかがうかがえる。かつては楽曲のレコーディングを代替ミュージシャンが行うこともあった彼らだが、多くのステージを重ねることでThe Grateful Deadにもひけを取らないジャムを展開できる見事なライブ・バンドに変貌した。もっとも、このころになるとオリジナルのメンバーはギタリストのRoger McGuinnしか残ってはいなかった。
本作は初めての2枚組アルバムだが、前半はSkip Battinを迎えた新生The Byrdsの実力を見せつけるライブ・アルバムでもある。完成しなかったミュージカル作品用にMcGuinnが書きためていた「Lover Of The Bayou」のような新曲や、Bob Dylanレパートリーの中でも珍しい選曲となった「Positively 4th Street」もさることながら、70年代版にアップデートされた「Eight Miles High」はとにかく驚異だ。BattinとGene Parsonsが生むうねるようなグルーヴ、後半にかけて徐々に盛り上がりいざメイン・テーマのコーラスに流れ込んだ瞬間の観客の熱狂ぶりはどうだろう。
スタジオ・サイドにも新しい趣向が凝らしてあるが、従来のThe Byrdsらしさを感じさせる場面も多い。「All The Things」のコーラスの録音にはGram Parsonsが呼び戻され、シンプルなカントリー・ソング「Take A Whiff On Me」ではClarence Whiteのバンジョーが冴えている。一方でBattinが提供した「Well Come Back Home」は一風変わったエスニック趣味が添えてあるし、「Hungry Planet」は驚くほどファンキーなテイストを持った一曲だ。