The Australian Jazz Quartet (BCP-1031) (1955)
変則的な編成と高い技術に裏打ちされた端正なプレイで、西海岸ジャズの名門であるベツレヘム・レーベルのカタログの中でも特に個性を際立たせていたAustralian Jazz Quintet。その始まりは1954年にカナダで結成された、オーストラリア出身のJack Brokensha、Bryce Rohde、Errol Buddleの3人とアメリカ人Dick Healeyからなるカルテットである。正式な音楽教育を修めた経験を活かし、クラリネットやヴァイブといったとりどりの楽器を取り入れたおかげで、有名なスタンダードやクラシック曲の演奏にも鮮やかな個性が吹き込まれている。
軽快なピアノ・トリオにBuddleのバスーンが加わった「A Foggy Day」で、リスナーは冒頭からこのLPに引き込まれる。HealeyとBuddleが「Loose Walk」で繰り広げるニューオリンズ風のにぎやかな掛け合いが終わると、お次はドラマーのBrokenshaが「The Girl With The Flaxen Hair」で繊細なヴィブラフォンの独擅場を見せる。こうしたコントラストを際立たせるような曲順の構成も、このカルテットの持つ音楽性の幅広さを印象付けるものだ。
しかしながら、本作の核となっているのは一貫してピアノに専念し続けているRohdeの存在である。ツイン・ホーンのファンキーなナンバー「Broadway」(12インチ盤にのみ収録された)や、MJQを思わせる優雅な「The Things We Did Last Summer」を含むこのアルバムにおいては、バップからチェンバー・ジャズまでをソツなくこなせるピアニストがいわばつなぎのような役目を果たしているのだ。