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Alex Taylor – Dinnertime (1972)

 Alex Taylorの1972年のセカンド・アルバム『Dinnertime』は、90年代に入って再発されるまではサザン・ロックの隠れた名盤だった。R&Bに裏打ちされたボーカルの力強さやファンキーなリズム感覚はもとより、マッスル・ショールズの確かなサウンドと通好みな選曲が相乗し、スワンプ・ファンに独占させるにはまったく惜しい内容となっている。Tom WilkesとBarry Feinsteinによるジャケット写真も実に印象的で、これだけ見れば誰もがTaylorを南部出身だと思うことだろう。
 長らく前座を務めていたこともあり、The Allman Brothers Bandとは縁の深いTaylorである。Scott BoyerやJohnny Sandlinといった前作からのサポート・メンバーのほか、Chuck LeavellとJaimoeが参加して泥臭いサウンドにはますますの磨きがかかっている。
 ニューオリンズ風の軽快なピアノが聴きものの「Change Your Sexy Ways」以外は、全てR&Bやブルースのカバーで構成されている。Jesse Winchesterの「Payday」はずっしりとしたファンクに解釈され、「From A Buick 6」はBob Dylanの原曲ではAl Kooperのけたたましいオルガンがフィーチャーされていたが、ここではLeavellのピアノがけん引し、賑やかなコーラスへと展開する楽しい仕上がりだ。Randy Newmanによる屈折したブルース「Let's Burn Down The Cornfield」やHowlin' Wolfの「Who's Been Talkin'」を聴けば、やはりTaylorはヘヴィなブルースマンだと思い知らされる。
 録音に参加したメンバーの多くは、Allmansの解散後にSea Levelを結成した。本作は同バンドの原点に位置する重要なレコードでもある。