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Hilton Valentine – All In Your Head (1969)

 第一期The Animalsが解散したあと、バンドのオリジナル・メンバーたちは思い思いのフィールドで活躍するようになる。Chas ChandlerとJohn Steelは新たなロック・スターの発掘で歴史に名を残し、Eric BurdonとAlan PriceはThe Animalsで開拓した英国流のR&Bを各々のやり方で追求していった。
 ギタリストのHilton Valentineはというと、風変わりな69年のソロ・アルバム『All In Your Head』の中で、アシッドな雰囲気をたたえた美しいバロック・ポップを展開している。10年前にスキッフルを、5年前にはBo Diddleyを演奏していたころから彼を知っているファンならば信じられないようなことだったろう。
 アルバムは厚い音のオーケストレイションに彩られているが、一本の芯として通っているのはValentine自身のテクニカルなフォーク・ギターだ。ハープシコードのような音色を導入した「Listen」は優しくはかなげで、「Is There Anything But Love」は自己流の「All You Need Is Love」が歌い上げられてる。「Peace」はきめ細かなトラッド風の深みがあるメロディの反復と、力のこもったギター・プレイのコントラストが素晴らしい。サイケな演出で見過ごされそうになるが、「Little Soldiers」では意外にもカントリーのエッセンスが取り入れられている。
 もう一つの驚きは、Valentineが素朴だが優れたシンガーでもあるという発見である。「Girl From Allemagne」は、このアルバムの中ではサウンドの飾り付けが控えめだが、メロディの美しさはとても印象的だ。ポップ・フォークにおける彼のキャリアは残念ながらこれ以上発展することはなかったが、本作は紛れもない名品だ。