Qui & Ultrakelvin – Split (2017)
2000年代から活動を続けるアメリカのカルトバンドQuiは、2017年にMr. Bungleのメンバーとして知られるベーシストTrevor Dunnとの共作アルバムを発表している。そして、立て続けるようにしてイタリアの実験的バンドUltrakelvinとのスプリット盤である本作が作られた。
David Yowの脱退によって初期のデュオ体制に戻ったQuiは、アルバムの片面を一大ノイズ組曲「Fuck Outer Space」で埋め尽くしている。SFチックなノイズの反復と、Matt Cronk、Paul Christensenのコーラスという単調な展開から一転し、Christensenのドラムが爆発する。穏やかなニューエイジ的サウンド、ミニマルなギターとエレクトロのパートを挟み、ピアノとコーラスによるモダンクラシカル的なラストを迎えていく。20分を超える組曲的な大作主義は彼らにとっては初めての試みとなった。
対してUltrakelvinはハードコアなバンドサウンドを貫いている。ポストパンク系の乾いたギターサウンドと、攻撃的なドラムが素晴らしい。1分台の曲が多い中、5曲目の「I - Ham Slam!」(曲名に割り振られたナンバーはバラバラである)は、中間部でギターノイズのインプロを聴かせていることからも、特にノイズロック的な印象を受ける9分強の大作だ。
同じノイズロックでありながらもお互いに異なるアプローチを見せた本作は、30年以上の歴史を持つポーランドのオルタナ・レーベルAntena Krzykuから発表された。Ultrakelvinは後に自分たちのサイドを独立してフィジカルリリースしている。