Graham Bond – Solid Bond (1970)
天下無双のオルガニストにしてオカルティスト。ついでに重度のヘロイン中毒者。そしてカネに関してはいっさい信用のない男。そんなGraham Bondが率いたバンドOrganizationは、1970年にはとっくに崩壊したあとだった。しかしオカルト・ミュージックの名盤『Holy Magick』と、Organization時代の未発表音源集である本作で、彼はふたたび英国のロック・シーンで存在感を放っていく。
録音当時の66年は、問題児だったリズム隊のJack BruceとGinger Bakerが相次いでOrganizationを脱退していた時期だ。ドラマーの後釜にはJon Hisemanが収まっている。ドラッグによってBondの金銭感覚はすっかり狂っており、おかげで本セッションで受け取るはずだったHisemanたちのギャラは彼が使い込んでしまっていたという。
BondのオルガンはBooker T.のようにファンキーで、Jimmy Smithのようにジャジーである。盟友のサックス奏者のDick Heckstall-Smithのプレイに、Bond自身のサックスを重ねたことで、演奏の持つ緊張感には強い拍車がかかった。
内容は、むしろカバー曲やオリジナルの焼き直しに興味を惹くものが多い。「Last Night」はColosseumの疾走感のあるジャズ・ロックを予見したような仕上がりになっているし、「Neighbour, Neighbour」などはオリジナルよりも後のBruceの未発表アルバムに収録されていたバージョンに近い。そして、感情が爆発するスロー・ブルース「Only Sixteen」の出来も特筆に値する。
ラストの3曲はBruceとBaker、さらにJohn McLaughlinが在籍していたカルテット時代の貴重なジャズ・セッションが収録されている。Sonny Rollinsの「Doxy」を実直に吹くBondと、我の強いBakerのドラミングは特に印象的だ。