Burl Ives – The Times They Are A-Changin' (1968)
言うまでもないことだが、『The Times They Are A-Changin'』はBurl Ivesの膨大なディスコグラフィーの中で真っ先に聴くべきアルバムではない。逆に、それまでのIvesの伝統的なフォーク歌手としてのイメージを払拭したり、1960年代に流行ったモダン・フォークの自由なアレンジの雰囲気を味わいたいなら、これ以上のものはないだろう。
このアルバムがここまで変わった作品になったのはひとえにBob JohnstonのプロデュースとRobert Merseyによる豊かなストリング・サウンドの賜物で、特にBob Dylanのカバーは野心的だ。「I'll Be Your Baby Tonight」ではかつてないほどエモーショナルなIvesの歌声が聴けるし、ラストの「The Times They Are A-Changin'」はミュージカルの一幕と思うくらい、やや過剰に演劇じみた造りになっている。Simon & Garfunkelの「Homeward Bound」は、かつて放浪の歌手と呼ばれたIvesにとってはなかなかに絶妙な選曲だ。他にも、グルーヴィーなオルガンをフィーチャーした「Gentle On My Mind」や、バロック風のアレンジが美しい「If I Were A Carpenter」はリラックスしたエレクトリック・フォークとして完成されている。
「I'll Be Your Baby Tonight」は、ビルボードのアダルト・コンテンポラリーの部門で最高35位となった。Ivesのシングルはこれ以降チャート・インしなくなったが、役者や歌手としての活発な活動は70年代の半ばまで続いた。