The Modern Jazz Quartet – Lonely Woman (1962)
このアルバムのタイトル・トラックにもなった「Lonely Woman」は、MJQのピアニストJohn LewisによるOrnette Colemanへのささやかな追想である。もともとLewisは、50年代のLAでくすぶっていたColemanを見出し、彼の途方もない才能にいち早く気づいた者の一人だった。Lewisはこの若く理屈屋なサックスマンにアトランティック・レーベルへの契約を持ちかけるだけにとどまらず、自身の携わっていたジャズ・スクールやモントレー・ジャズ祭への参加までもかいがいしく斡旋した。
オリジナル版では和声楽器であるピアノを意識的に排していた「Lonely Woman」は、当時頭角を現しつつあったColeman初期の傑作であり、彼のペンによる曲の中でも特にスタンダードと呼ぶにふさわしいナンバーでもある。MJQのバージョンは原曲よりもクールな仕上がりだが、ここで注目すべきは、Coleman特有のピアノレス編成から生まれていた不穏でダークなあの空気が、本作にもほんのりと息づいていることだ。一見すれば意外な選曲であるものの、これは生まれるべくして生まれた名演ともいえるだろう。
続く「Animal Dance」からはMJQの洒脱なスイング感覚がさく裂していく。「Why Are You Blue」ではMilt Jacksonのブルージーなヴァイブと、哀切ただようLewisのピアノに思わず感情をさらわれてしまいそうになる。室内楽の緻密なアンサンブルが活きる「Fugato」、Lewisのオーケストラ作品の再演である「Lamb, Leopard」など、全体を見渡せば本作はMJQの音楽の見事なショーケースを構成している。