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Marc Benno – Minnows (1971)

 かつてはLeon Russellとのコンビで西海岸のサイケ・シーンに出現したMarc Benno。A&Mレーベルから発表された彼の70年代のソロ・アルバムはどれもブルースの薫陶を受けており、その線の細いボーカルとは対照的に、豪華なバック・ミュージシャンを従えて繰りだされるサウンドは質実剛健そのものだ。とりわけ本作はスワンプ・ロックの傑作と讃えられる一枚で、Carl RadleやJim Keltnerを擁したリズム隊、ギターにはClarence White、Jesse Ed Davis、Bobby Womack、Jerry McGeeらを迎えている。このメンツだけでも本作がいかに豊かなアルバムかが想像できるはずだ。
 フォーク・ロックのオープニング「Franny」は、Bennoの歌声がRonnie Laneのように穏やかに響く。「Put A Little Love In My Soul」は一転してファンキーな展開を見せ、「Stone Cottage」や「Baby Like You」はモダンでレイドバックしたいい雰囲気のブルースが聴きどころだ。だがスワンプ愛好家なら、朴訥としたピアノをバックにした「Back Down Home」の、賑やかなコーラスの妙にも惹かれることだろう。ここではClydie KingやRita Coolidgeが最高の歌声を聴かせている。ほかにもNick DeCaroのアコーディオンをフィーチャーした「Good Times」、優れたスワンプ・ソングの「Don't Let The Sun Go Down」、そして恋人たちの切ない別れを描くラブ・バラード「Speak Your Mind」の素晴らしい歌詞も見逃してはならない。
 ブルースをベースにしながら曲ごとに様々な顔を見せるまさに理想的な一枚である。