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Leadbelly's Last Sessions (1953)

 伝説的バンドNirvanaのメンバーであるKurt Cobainは、生前に50枚のフェイバリット・アルバムを選出していた。その手書きのリストには80年代以降のパンクやオルタナの錚々たる名盤が並んでいたが、その中でひときわ異彩を放っていたレコードが、1948年に残されたLeadbellyことHuddie Ledbetterの生前最後のセッション集だった。
 SPレコード時代の録音スタイルは一新され、本作はLeadbellyの唯一のリールテープ録音となった。このレコーディング環境の変化は、クリアな音質だけではなく一曲の収録時間の飛躍的な延長という恩恵をもたらした。フォークウェイズのプロデューサーFrederic Ramsey, Jr.の自宅におけるリラックスした雰囲気の中、Leadbellyは会話も交えながら、かつてのSP盤には収まらなかった長尺の歌の多くを今回初披露している。「John Henry」のような定番曲も5分にわたってのびのびと演奏された。
 「Irene」のような穏やかなララバイや、「Cry For Me」でのLeo Kottkeのように卓越したフォーク・ギターのテクニックは圧倒的だ。膨大なレパートリーを誇ったLeadbellyの肩書きは、ブルースマンというよりまさにソングスターという言葉がふさわしい。セッションの翌年の1949年にこの世を去ったが、彼の残した録音群はアメリカ音楽の聖典となり、50年代以降のスキッフルやフォーク・リバイバルのインスピレーションの源泉となった。