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Al Hirt – Honey In The Horn (1963)

 Al Hirtの本領はどこにあるのか? という問いには人それぞれの答えがあるかもしれない。ステージ上ではニューオーリンズ由来の楽しいショーマンシップを発揮するし、映画監督Quentin Tarantinoもいたく惚れ込んだ「Green Hornet Theme」の超絶技巧は、シンシナティ大学の音楽院で培われた一級のテクニックで、聴いた者は等しく圧倒されてしまう。そして、1963年のヒット・アルバム『Honey In The Horn』はそのいずれとも異なる。
 本作はChet Atkinsプロデュースのもと、アメリカン・ポップスの殿堂であるナッシュヴィルで録音されたHirt流イージーリスニングの最高傑作だ。ここでHirtを彩るのは、ふだんの彼の音楽には欠かせないPete FountainやPee Wee Spiteleraといったクラリネット奏者ではなく、The Anita Kerr SingersやHenri Renéの楽団による甘やかなサウンドで、このスタイルはHirtの新たな定番となった。
 カントリーからR&B、シャンソンに至る幅広い名曲を巧みなトランペットで料理していく。グラミー賞を受賞した「Java」はAllen Toussaintのペンによる陽気なニューオリンズ・ナンバーのトランペット・バージョンで、Floyd Cramerの軽快なピアノもまた絶品だ。「Fly Me To The Moon」や「Theme From A Dream」のような短くシンプルなバラードが光る中でも、特に「Man With A Horn」はHirtの十八番である高らかなホーンが屹立するハイライトである。Ray Charlesの「Talkin' 'Bout That River」とHank Snowの「I'm Movin' On」のカバーはどちらも楽しいダンス・チューンで、後者ではおなじみの吹きまくるHirtの魅力が堪能できる。