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The Beach Boys – Concert (1964)

 ホットロッド・バンドとしての頂点を極めたThe Beach Boysにとって、1964年のThe Beatlesの上陸は大きな転機となった。皮肉にもレーベル・メイトとなった彼らに対抗するために、Brian Wilsonはスタジオの仕事に没頭するようになり、大規模なコンサート・ツアーに出るのをやめることになる。過剰なポストプロダクションや演奏の瑕疵をあげつらう声は未だ止むことはないが、本作が初期のThe Beach Boysが放っていた輝きと、それを取り巻く無邪気な熱狂を伝えるオリジナルのライブ・アルバムであることは間違いない。
 一曲目の「Fun, Fun, Fun」はそうした状況を象徴するトラックで、熱狂したオーディエンスの大歓声によってまともなテイクを録音することができなかったために、スタジオの音源からオーバーダブされたという伝説がある。メンバー紹介をしながら演奏になだれ込む「Little Deuce Coupe」や、Mike Loveのカントリー趣味が表れた「Long, Tall Texan」も興味は尽きないが、Brianの描いたナイーブな「In My Room」や、底抜けに明るい「I Get Around」におけるコーラスのハーモニーにはやっぱり息を呑まされる。
 Dennis Wilsonのボーカルをフィーチャーした「The Wanderer」や、コミカルに徹した「Papa-Oom-Mow-Mow」(一度映像で見てみることをおススメする)といったカバー曲は、本作で初お披露目となった。中でも「Graduation Day」は、おふざけは目立つもののBrianが愛するThe Four Freshmenの名曲であり、当時のコンサートの定番曲でもあった。